「協働」の本質をわかりやすい言葉で学ぶ本
★★★★★
最近「協働」という言葉をよく耳にする。
たぶん良くも悪くも、「協働」なしには、これからの生活や
社会を描けなくなりつつあることが、多くの人々の間で実感
を持って徐々に感じられるようになってきたからだと思う。
しかし、「協働」ということばは同じでも、現在それぞれが
イメージしている意味や内容は様々だ。自分自身、まちづく
りに関わるNPOに現在携わっており、行政の人と「協働」に
ついてやり取りする中、その考え方の整理を改めてしたいと
思っていた。そんなとき「協働」のエッセンスをコンパクト
にまとめたこの本は、頭に整理にずいぶん役立った。
ちょうど「協働」に関心を持ち始めたNPO関係者だけでなく、
そろそろ地域デビューしてみたい団塊世代、主婦、学生、
そして異動の多い行政関係者など、まさに協働の当事者たち
の目線合わせには絶好の本だと思う。
著者は、ほぼ20年前に「参加」とは違う、もうひとつの世界
である「協働」の存在とその深さ・広がりに気づいたという。
著者自身、行政の現場に長く身を置き、その後大学やNPOの
現場に関わるといったマルチな立場と経験を持っている。
そのキャリアに基づく言葉にはリアリティと説得力を感じる。
「野球は9人でやろう。行政、議員、市民で9人。内野(行政)
だけで以前のように野球はできない」「協働は、実利と展望
があることが成功の最低条件」…含蓄のあるフレーズが、
この本の中にはたくさんある。相手と理解を共有するための
「殺し文句」としても楽しく学べると思う。