豊かな深い音色
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ラベル、ドビュッシーを除くと、フランスものは聴くことが少なく、特にプーランクのピアノ曲となると録音も限られている。ロジェは、豊かな深い音色が魅力的。細かいニュアンスにあふれ、都会的な曲にも田舎風な曲にもエスプリがきいて、全体の構成に破綻がない。GRAMOPHONEで1988年にINSTRUMENTAL AWARDをとった名盤と同じ録音か。ライナーノートも親切で資料的価値もある。邦版は、さらにCD1枚分=9曲が加わり、プーランクのピアノ曲としては、とてもお得な決定版に思える。
別に、ナクソスのプーランク全集(1枚もの×3)を持っているが(私のものはカナダ製輸入盤)、こちらを弾くOlivier Cazalは、音質や総合的な腕前はロジェにかなわないようだが、時に異様なとがり方をみせ、鋭角的なリズムや呼吸、素早いテンポや指さばきに息をのむ瞬間がある。プーランクの少し病的な現代性(擬古典性)が好きなら、こちらもおすすめ。中堅のフランス人だが、新大陸でも活躍しているようで現代的。
知的でクールなタッチ
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1986年2月、ロンドンのBarnabas教会で録音。パスカル・ロジェは1951年パリ生まれ。フランシス・プーランクは1899年生まれ-1963年没なのでロジェの年少時にはまだ活躍していたことになる。ロジェが最初にパリのオーケストラと競演したのは11才の時なので、直接の親交もあったのかもしれない。そう思ってしまうほどここでの演奏はプーランクを知り尽くした見事な演奏だ。
プーランクの曲を聴いて思うのは、『とてもクセになってしまう音楽』だということだ。たとえばこのアルバムの中の『ナゼルの夜』。この曲をフランス音楽好きが聴けば驚くだろうし、ジャズ・ピアノが好きな人が聴けば、頭の何処かにひっかかりつづけるだろう。パスカル・ロジェの演奏はそういったプーランクの特性を増幅させてしまう。知的でクールなタッチだ。
村上春樹の『意味がなければスイングはない』をお読みになった方は、村上氏が『日曜日の朝のフランシス・プーランク』と題したエッセイを書いていることをご存じだろう。この中に出てくるがプーランクという人は朝しか作曲しなかったらしい。サティにしてもプーランクにしても変わっているが、曲を聴くと確かに『朝』が感じられるから不思議だ。また、この中で村上氏はプーランクの演奏でロジェを筆頭にあげている。ぼくも同感だ。
深夜にワインを飲みながら聴くには最高の音楽
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パスカル・ロジェが、プーランクの精神をよくくみ取って、重くならず、しかもフランス風のしゃれた曲想を、軽々と弾いている。録音も、ピアノに近づきすぎず、気持ちのよい残響があり、しかもリアル感のある、優秀録音である。ステレオ装置がよければ、それだけ心地よくなる、変なお化粧のないよいCDである。
何度聞いても飽きない演奏で、夜遅くにこのアルバムをワインを飲みながら聴ければ、最高であろう。一生の友となりうるアルバムである。
$フランス的エスプリ$
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新古典主義的作曲家陣の中でもハイセンス なプーランク。
15Improvisationsに関してはロジェの解釈が納得。自分の中でプーランク=ロジェというほど彼はプーランクをエレガントに料理しています♪文句なし☆5
もしもピアノが弾けたなら
★★★★★
ここに聴けるような趣味の良さを感じさせる音楽を
自ら奏でることができたならどんなに素晴らしいだろう。
大昔に習っていたエレクトーン(というより当時はオルガンに近かったが)を
ずっと続けていたら、少しは足元にでも近づけただろうか。
ピアノを志す人々にとってはひとつの里標にもなるであろう名演奏だが
一聴衆の耳にもフランス音楽の様々なヴァリエーションに通底している何かが
香気深く立ち込めているように響く。音色の透明感は録音の良さか。
いずれにせよ、ふと何処かで耳にしたらその音源をどうしても
探したくなるようなそんな優れた作品だと思う。