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高村光太郎 (講談社文芸文庫)

価格: ¥1,575
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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高村光太郎の思想的背景 ★★★★★
 高村光太郎の思想的背景を知るための本格書である。
 光太郎の母胎は父光雲だった。青春期は欧米の社会に暮らし、その文物に触れ、彫刻や詩の世界を知って帰朝した後の彫刻家・詩人光太郎は、母胎への反発と、逆に抜き難くつきまとった母胎親和との葛藤があった。親が強ければ子を堕落させて孝子にしてしまうし、子が強ければ鈴虫のように親を食い殺してしまう。この二律背反に光太郎は悩まねばならなかった。
 戦時中は戦争詩を書くなど、戦争にに協力的であったが、終戦を境にして、掌を返すように昨日の言説を返してしまうのか、戦後の思想に違和感を感じて、著者はその根源を探りたかったという。すなわち、心ならずも虚偽を表現してきて、本音を言えるようになったから言い出したのか、と考察していく。
 思想や芸術が人間の生死に関わる深刻な問題として、著者は高村光太郎を捉えようとしている。「近代古典主義の最後の詩人」であるとも呼んでいる。凡百の詩の技術家たちを超えて、高村にこだわるのは、彼が詩人だからではなく、確固としたその風貌を失わなかった最後の一人だったからである。
 本書の解説で北川太一は、彼の功績を次のように評している。
 吉本隆明は我々の風土の内側から「抽象・論理・原理」のローラーを発動させてきたのである。戦後社会を築いた三人の人物としてマッカーサー、吉田茂、吉本隆明を数えてよいだろう。
 過大評価だと思われる方は、著作集を読んでみてください(雅)