ヴァイオリニストのギドン・クレーメルと彼のアンサンブル、クレメラータ・バルティカは、バロックから現代までさまざな音楽のレパートリーに取り組んできたが、彼らはもっと新しい作品にも光を当てようとしているようである。このグループはバルト海沿岸地域の音楽の動向に通じているし、クレーメルの冷たいほどの精密さと情熱的な演奏ぶりは、現代の巨匠たちにぴったりと合っている。
「シレンシオ」についてクレーメルはもう1つ、すばらしいレコーディングを行っているが、今回は、アルヴォ・ペルト、フィリップ・グラス、ウラディーミル・マルティノフという一匹狼的な作曲家3人による瞑想的な音楽をフューチャーしている。
マルティノフはこの3人のなかではたぶんもっとも名前が知られていないが、このディスクのハイライト曲となるのは彼の作品「“カム・イン!”」である。人の心を動かすこの作品――ロマンティックで抒情的な演奏がたっぷりとあるのが特徴である(時折ドアをノックする音が聞こえる)――は、神秘的であるが、また優しくも甘美である。
グラスの弦楽四重奏曲第2番を管弦楽用に編曲した作品(「カンパニー」)は、クロノス弦楽四重奏団によるオリジナルとほとんど同じくらい迫力がある。世界初演のペルトの短い曲が、このディスクを完全なものにする。「ダルフ・イッヒ」はヴァイオリンとオーケストラのためのすばらしい作品で、ペルトの傑作“スンマ”を思い起こさせる。
これはあなたをとりこにするとても楽しいディスクであり、クレーメルから贈られたもう1つの宝石である。(Jason Verlinde, Amazon.com)
Come in!
★★★★★
アルバムの7〜12番目という中途な場所にある「Come in!」をこのところ毎朝毎晩かけている。
ウラディーミル・マルティノフ(1946〜)というロシアの現代音楽作家の作品。ここまで美しいものがあったか…と、題名からは想像つかない甘美でリリックな弦の調べが部屋に満ちる。
曲中、リリックな進行を破るようにして「鍛冶屋のポルカ」で使われるような明るく乾いた音色のウッドブロックがリズムを刻むだす、深山の静けさを更に深めるようでもあり…この箇所がとてもいい。
名曲誕生
★★★★☆
Martynovの曲は名曲だと思います。サビの部分は、ドレミファソラシ...とゆっくり昇っていくだけですが、そんな曲は他にもあったような気もしますが、とにかく美しくて癒されます。単調さを感じさせない演奏も素晴らしい。
音楽によって表現された沈黙
★★★★★
現代音楽はなんだかホラー映画のサントラみたいな曲ばっかりで人気がないとはよく言われることですが、このアルバムは聞きやすいです。特に、旧ソ連時代のバルト三国音楽界に衝撃を与えたことで有名な、一曲目のペルト作曲「タブラ・ラサ(白紙を意味する)」は感動的。北欧でも東欧でもない不思議な旋律の伝統のうえに、現代的で思索的な雰囲気と、抒情詩のような美しさがほどよく融合しており、長く愛聴できる傑作だと思います。
また、安手のデザインの多いクラシックアルバムにしては、信じがたいほどセンスの良いジャケットに、ライナーノーツの写真集は必見。部屋のインテリアに飾っておくのもいいです。