滑稽な寓話で痛烈な批判
★★★★☆
ジョージ・オーウェルによる社会風刺の色濃い寓話。ソ連の独裁制
に対する批判がこれでもかというぐらい盛り込まれている。しかも、
ほとんどオブラートに包まず、あけっぴろげに寓話化している。
動物たちが人間からの支配に対して異を唱え、闘争し、革命をなし
とげる。搾取する人間を打倒して、新たに生まれたのは「動物農場」
という動物たちによる動物たちのための農場であった。果たしてこ
の農場の運命はいかに…。
この動物農場はソ連にあたり、豚が演じるスターリンも登場する。
そして、健気ではあるが無知な動物たち(豚は除く)の姿が一段と
どうしようのない哀しさを感じさせる。
本書は全体で250頁あまりあるが、本編はおよそ170頁、残りはオー
ウェルによる「出版の自由」と題された序文(出版にあたって結局
は省かれた)とウクライナ語版への序文(自身による来歴の解説)、
最後に訳者解説である。オーウェル自身の政治姿勢が語られている
ので本編以降も面白かった。反共産主義という文脈で登場するもの
の、オーウェル自身はイデオロギー的に反社会主義ではないことが
よくわかる。また、第二次大戦中イギリスにおいて「ソヴィエト神
話」なるものが満ちていたことについて、目を覚ませ!この国はい
つから全体主義になったんだ!と彼は批判する。外に対する批判が
本編の中心であるが、後半は内に対する批判―ソヴィエト神話を信
仰するイギリスの人々―が述べられている。読み応え充分であった。
痛快風刺
★★★★★
この物語の最後が意味するもの
彼らはその後どうなったのだろうか それは読み手が考えることになるのでしょう
この物語の特徴は独裁体制の風刺などが書かれていますが、その後どうなったのかが書かれていない
それは強烈な風刺でありながら、こうなってはいけないということを私に語りかけてくれる
そんなこの作品が好きです
これぞ
★★★★★
最近例の作品の影響からかにわかに再注目のオーウェル。
波に乗って読んだものとしてえらそうなことは言えないが、
この寓話性は素晴らしい。
メタファーであるとか寓話的であるとかということが容易に売り文句となる中
痛烈な事象をこうも見事に描き出す。
さすがに面白い。
「おとぎばなし」の口調を生かす「です・ます体」翻訳
★★★★★
川端康雄訳は一部が、高校生向けの『理想の教室《動物農場》ことば・政治・歌』(みすず書房,2005)に出ていて、それまでの訳と異なり、「です・ます」体で訳されているのが、特徴でした。
その意図はこのディストピア小説が「A Fairy Story」と題されており、マザー・グースにも連なる「おとぎばなし」のスタイルを持っていることを表すためだと説明されています。批判だけではなく、作者オーウェルがこめた希望を感じさせることができるのではないかという挑戦でもありました。その意図は結構実現されているように読めました。声を出して読みやすい文体になっています。
付録の「出版の自由」「ウクライナ語版のための序文」も『動物農場』を読むためのオーウェル自身の書いた必読文献ですし、川端氏の「解説」も、みすず書房本の要約で読み応えがあります。また、註は詳細に付されていて、既に角川文庫本を持っている人でも役にたちます。
ハラス&バチュラーのアニメ版『動物農場』もなかなかの傑作です。村上春樹の『1Q84』が話題になっている昨今、オーウェルのエッセィや『1984』も再評価されますように。
おとぎ話に仮託しつつソ連社会の実態を描く。
★★★★★
言わずと知れた、『1984年』と並ぶジョージ・オーウェルの代表作。おとぎ話に仮託しつつソ連社会の実態を痛烈に描き出す。スターリンの恐怖政治、反対派迫害のために乱用される「トロツキズム」、蔓延る官僚主義、永続革命から一国社会主義への転換、そしてその下での経済的矛盾や、プロレタリア独裁の実態、重労働がノルマとして課される苦難などといったソ連社会主義の諸矛盾がおとぎ話の中に絶妙に組み込まれている。まさに傑作。面白かった。