■グレートマザーと呼ばせてもらいたい。”家族愛とは何か”が深く理解できます。
★★★★★
・金美齢さん、あなたは日本人のどの女性評論家よりも日本的な家族愛を真に理解し、行動や発言が愛に満ちている。日本人が大事にしてきたものを体現している。
・この著書も例外ではなかった。私は尊敬をもってあなたをグレートマザーと呼ばせてもらいたい。正確にはgreatest Motherと書くべきか。
・心に染みた箇所を少しだけ
−夫・周さんを評して
「人間の価値というものを、過去がどうだとか、離婚歴があるとか、彼はそんなところに置かないものだと思うと、私はとてもうれしく、この男性なら生涯の伴侶になる、と確信できた。」
「私たち家族の来し方行く末を見つめたとき、家族の誰かが心身に何らかの傷を負ったり、問題を起こしたり、思い悩んだり、あるいは親子の関係がねじれるとか、嫁姑の問題が起きるとか、そういうくだらない小さな愚かしいいさかいが一切なかったと、私は自信を持って言える。それもやはり彼が家族の要であったからのことなのだ。根底に彼の優しさと家族に対する深い愛情があった。」
・そして、最後に。
「もう一つの自慢は、まずまず”美しく”年を重ねてきたということ。
最近の流れは、アンチエイジングという言葉が盛んにいわれているが、私は自然に逆らうこれらの言葉も、態度も嫌いだ。〜中略〜 今、七十三歳の自分の年齢がとても自慢なのだ。〜 ただし、無駄に年をとらない”美しく齢”を重ねる。アンチエージングではなく、ビューティフルエイジングなのだ。」と。
そこも大いに共感しました。金さんは年をとるごとに本当に綺麗になっていて男性からみても恐ろしく魅力的です。マザーというよりはレディーとして。
時には『リゴレット』の様に
★★★★★
−−私の自由を最大限に許してくれた周英明という男。だから、私たちの結婚生活は続き、彼の死によって分かたれた今もなお続いていると、私は思っている。(本書 193ページより)−−
金美齢さんは、ヴェルディのオペラ『リゴレット』が好きだと言ふ。この本を読んで、私は、その理由が分かった気がした。
感動的な本である。台湾出身の論客、金美齢さんが、夫君、周英明氏との出会ひ、結婚生活、共に戦った台湾独立運動、子育て、そして、周英明氏の病気と他界を回顧した本である。−−その中には、金美齢さん自身について、私などは今まで知らなかった事も述べられて居る。
この本を読んで思ふ事は、人は、政治や社会の事柄について発言する前に、良き家庭人でなければならないと言ふ事である。家族こそは、人間の生活の原点であり、家族を愛し、家族の為に涙を流せない者が、民族や国家を、ましてや世界の為に、何を語れるか、何を為し得るかは、疑問だと言はざるを得ない。−−親子の愛と別離を描いた『リゴレット』を深く愛する金美齢さんが、台湾を、日本を憂ひ、発言を続けるのは、当然なのである。
(西岡昌紀・内科医)