岩波文庫にしては面白過ぎます
★★★★☆
堅い書目の多い岩波文庫群だが、ハヤカワ或いは創元から出てもおかしくはないこの一冊は洒脱で面白く一気に読める。引き続きこのような路線本を大いに期待。
我輩が小学生の頃、NHKでドラマ化されたぞ・・・
★★★★★
我輩は今年で45歳になるが、小学生の頃NHKでドラマ化されたのを観たのをいまだに忘れることなく覚えているぞ。ラストシーンは警部が雨の中を一堂が集まっている屋敷に向かって歩いて行くという脚色がされていたが、その衝撃は鮮明に我輩の脳裏に焼き付いていますぞ!あの警部は人間が抱く良心の呵責を象徴したのではないだろうか?罪悪感といったものはいくら心から拭い去っても、去らないものだということを作者は訴えたかったのではなかろうか?勿論、小学生の頃は我輩はそんな感想が抱けるほどの人生経験は無かったのだが・・・
謎解きではありません
★★★★☆
一応、ミステリーにカテゴライズされていますが、謎解きを目的としてみるとあてが外れるでしょう。
ある女性の死を前に、幸福そのものだった家族の欺瞞が剥ぎ取られていく姿がサスペンスフルに描かれています。
また、この作品のミソは、家族の秘密が明らかにされた後、描かれる人間の醜さ、合理的な解釈に基づく疑問とどんでん返しが、二重三重に張り巡らされています。
一方、垣間見える作者の政治的な姿勢を嫌う人がいるかもしれません。そのような人は、残念ながらこの作品で描かれる人間像に共感できないでしょうし、私の趣味とも合わないでしょう。
岩波文庫のミステリ
★★★★★
岩波文庫でミステリですか、とい意外性で購入。書店のPOPもイカしていましたので、中身も確認せず、購入しました。戯曲なんて知らなかったです。いままで戯曲なんて読んだことありませんでしたが、本書は数ページ読んだところから、作品の世界に引きずりこまれました。凄い作品です。頭の中にバーリング家の食卓の映像が浮かび上がってくる。そこで登場人物達が自分の「罪」を警部に暴かれていく。そしてその暴かれた「罪」はその個人の本質を表に晒すのである。普通の生活であれば決して表に出ない、その個人の本質。他人の本質を知ることで自分の「罪」を自覚するもの。また決して自分の「本質」を認めないもの。人間を冷静な目で観察しなければ描けない世界です。ミステリですが、もっともっと深い世界を表現しています。
本作を読むことで、いままで知っていながら見ることのなかった世界を見ることが出来るかもしれません。
巧い!
★★★★★
端的にいえば、固定された舞台と登場人物の密室心理劇。ミステリといえばミステリだが、12人の怒れる男の雰囲気に近いか。
ミステリお決まりの二重底ラスト(にしては凝り様がすごい)、道具建てが本書の書かれた時代背景からか、ややステレオタイプのにおいがするが、兎に角登場人物が段々カラマーゾフ一族化していく様子は本当にハラハラドキドキワクワク。岩波で波瀾万丈ドキドキワクワクといえば、あとモンテクリスト伯と、他に何があるだろ?
構成や作劇手法が巧みな本書、私は1時間で一気に読み切ってしまいました。
少し時間が空いたときにでもどうぞ。