雨に打たれた花のような
★★★★★
しどけない京美人にメロメロなあづま男の図。
切なくてしっとりしていて、京都を舞台にした作品の中では一、二を争うくらい好きです。
「いとしいとしというこころ」がお好きな方はお口に合うのでは?
イラストもすばらしかった。
学生時代は相愛だったのに、とあるシーンを目撃されたせいで破局し、数年後に、父親の愛人と、その息子として再会。
父親の死後も伝統芸能を後援する代償は愛人契約。
古い町家に囲われて罵られながら陵辱されながらも、どこかやさしく甘い逢瀬。
胸が痛くて痛くて。
言い訳しようとしない受けの潔さが憎らしいくらい。
誤解がとけて元鞘になる瞬間が待ち遠しかったです。
後半は、相愛となってから、企業経営者と伝統芸能の後継者としてのそれぞれの立場を慮っての葛藤。
私財をなげうって恋人のためになんとか会館作っちゃったり最高級の衣装を仕立てちゃったり、なんてかわいい男。
鉄仮面のあまりの煩悩の深さに家族が心配するのもむべなるかな。
話の展開は王道中の王道だと思いますが、細かいエピソードが丁寧に描かれていて、緻密な虚構の世界を作り上げてくれています。
思いっきり作品世界に浸って一喜一憂できました。
受けのあまりの不幸体質とけなげさ、攻めの情熱的な執着ぶり。
珍しく受け攻め両方に感情移入できた気がします。
出会いが剣道だったというあたり「絆」や「英のなまえ」を思い出しました。
再会、借金の形、身代わり、和服にスーツ、能、パトロン、古い石畳、一輪の椿、錦、真剣、・・・
ハーレクインばりのロマンチックでドラスチックな愛に浸りたいときに。