人民元の新時代を動かしている政策決定中枢がわかる
★★★★☆
人民元の動向が新聞に出ない日はないともいえる.今後,中国政府がどのような形で元を切り上げていくのか,その進め方に世界は注目している.特に7月には,2%の切り上げと共に,これまで9年ほど続いたドルとの固定相場から,通貨バスケットを参考にした柔軟な制度への移行が発表されている.
そのような政策の決定が,誰によってどのようになされているかが,著者の在北京日本大使館在勤時代の首脳・経済学者との交流から得られた知見などを基にして記されている.特に現在の胡錦濤、温家宝の第4世代の,要職にある人々の閥やパーソナリティーなども含め,誰がどのように経済政策を決めているのか垣間見ることができた.外から見ると混迷を深めているように思える中国の経済政策も,その決定プロセスを知れば,納得できる部分もある.
官僚らしいと思ったのは,日本と中国の官僚のどのランクが同位と見なされるかという部分.官僚の方々は,日々このようなことも考えていなければいけないのだろう.
今の中国の経済政策がどのように決められているかわかる。
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9月の上旬に某経済雑誌の記事中で著者とこの書籍が取り上げられていたので購入してみました。
日本の役所の方が書かれた本らしく、中国政府内部についての良質な情報を綿密に分析してまとめられたレポートだと思います。中国当局の大きな政策の方向性が、どのようなプロセスで立案され決められているのかということがよくわかります。
中国政府内のヒエラルキーについても詳しく、実質的な決定権限のある人物が誰なのか、どのランクの人物がどこまで決められるのか、ということについてよくわかります。
特に日本の場合と大きく異なっているので、安易な類推は大きな間違いにつながります。そもそも三権分立とか中央銀行の独立などがありませんので。
日中間の当局の交渉などで、中国側は実質的な権限のない1ランクポストの低い担当者を出してくるので話がまとまらない、という話はよく聞きますが、個人的にはそれは面子を重視するお国柄と言うよりは発展途上国の典型的な行動パターンなのではないかと思います。日本も以前同じようなことを米国に批判されていたような記憶が…。ということで中国も経済的な発展とともに政府のシステムも合理的に変わっていくのでしょう。
ちょっと脱線しましたが、こういった視点から書かれた書籍は他に知らないので貴重だと思います。新聞の中国報道を読んでいてホントかな?と思ったときは本書で取材元の人物をあたると報道の軽重の取り違いがわかったりします。
中国経済のことをちゃんと知りたい人にとって最適の書
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人民元改革その他の中国の経済改革の意味を評価し、先行きの政策動向を予想するうえでは、中国の政策決定プロセスをちゃんと理解することが大事なのはいうまでもない。しかし、そのプロセスは、米国や日本などの民主主義国家ほど明らかではない。中国は人治国家などといわれてきたが、カリスマのいた毛沢東や鄧小平の頃はともかく、第4世代の胡錦濤、温家宝の時代には人治の中身も大分変わっているともいわれる。しかし、その具体的中身はよく分からない。
本書では、北京の日本大使館で4年間中国の経済政策決定にかかわる人物たちとの交流を通じて、筆者が得た知見をもとに、この点が余すところなく分析されている。
中国経済の決定プロセスについて、日本の読者がよくわかっていないことをよいことに、新聞等で誤報がどうどうと掲載されることもあるが、本書を読めば、メディアの憶測記事や市場の噂に必要以上に踊らされることもなくなるだろう。
その意味で、本書は中国経済の本当のところを知りたい人にとって最適の書だと思う。