知的好奇心のために読む本
★★★☆☆
自然界には規則性のあるデザインがいくつも見られる。雪の結晶や蜂の巣など。何故だろう?そんな素朴な好奇心をかきたててくれる本である。
また、
「数学者は普遍性を探し求める。たった一個の三角形を調べて内角の和が180度になっても、彼らは何とも思わない。だが、それがすべての三角形にあてはまるとしたらすごいことだと考える。」
「(フィボナッチ数列は)表向きはウサギの問題である」
などの興味深い記述も多い。
知的好奇心を満足させる本である。
雪の形の追究が大きな宇宙論に
★★★★★
雪ってどんな形?――この素朴な問いにこだわり続ける著者。その探究心を駆り立てたものは二つだ。一つは冬の朝、窓に張りついている霜に見とれた幼いころの記憶だ。霜はシュールリアリスム調で神秘的だった。
もう一つはぼろぼろになるほど読んだ、ヨハネス・ケプラーの『新年の贈り物――六角の雪』。飽くなきパターンの探求者ケプラー、彼を追い越したいという熱い想いが著者の原動力になっている。
雪の形を探求することが、生物学はもちろん、物理学、数学、天文学と広大な領域におよび、しかもユークリッド幾何学の時代から現代科学の最先端までのうんちくが縦横無尽、図版を交えてわかりやすく語られている。宇宙は生きており、しかもダイナミックに動いているということがよくわかった。そして悲しいかな! いずれ宇宙はビッグクランチ(宇宙大収縮)を迎え、死滅するだろうということも。
数学者の視点をかりて世界を眺める
★★★★☆
題、以上の広がりをもつ深奥な自然に隠された数学に話は広がる。
(物理学や化学、生物学など科学全般におよぶ)
今年読んだ本のベスト5に入る。
著者の本は幾つか読んでいるが、もっとも一般向けに降りてきてくれている本書が一番お気に入り。
最初レビューの方が、加筆を要さない秀逸な説明されていらっしゃいます。
ここで、私が下手な引用等をする事は折角の名著と先のレビューを損なう気がするので遠慮させて頂く。
数学者の視点で万物を眺めると、世界はこんなにも美しさに満ちているものかと感嘆させられます。
雪の結晶形の"規則性"と"不規則性"の起源が分かると、自然を見る目が変わります
★★★★★
本書は「What Shape is a Snowflake ? : Magical Numbers in Nature」の日本語版です(一部セクションをカットしていますが、不自然さはありません)。
雪の結晶形に見られる"規則性"と"不規則性"を理解するための各種概念(パターン形成、対称性、対称性の破れ、相転移、分岐、フラクタル、カオス...)を殆ど数式を使うことなく解説しています。そして、そのような概念が自然界に見られる形・パターンを理解する上でどのように活用できるかについて様々な例(*)を挙げながら解説しています。(*: 砂丘、波、天体の動き、らせん、動物や貝殻の模様、植物の成長パターン、動物の脚の運び、遺伝子・分子、ビッグバン(宇宙の"形")...) 個人的には "対称性の破れ"の説明の仕方(球対称の圧力に対するピンポン玉の潰れ方)に感心しました。
これらの多数の例を眺めた後に雪の結晶形に再び目を戻すと、雪の結晶は"パターン形成の数学のショーケース"であることに改めて気付かされます。こうして自然におけるパターン形成の"普遍性"に気付かされると、湯川秀樹先生の言葉「現実の根底にある自然法則に気付くのは達人で、現実の根底にある自然の調和に気付くのは詩人である」(目に見えないもの)は至言だなぁと感じ入ります。つまり、"数学の目"を持った"詩人"が自然を眺めるとき、自然の精緻さと不思議さを一段と深く味わうことが出来る訳です。(この場合も「モノを見るという行為の多くの部分は予備知識と予想を土台にしている」と言えるわけです) 本書は そんな自然の鑑賞の仕方の良いガイドブックとなっています。(^-^)
本書の類書として「自然のパターン―形の生成原理」があります。このようなテーマを扱う為の数学については「自然の中の数学 − 数学で見る自然の美しさ〈上〉」「〈下〉」が詳しいです。(特に下巻の内容。但し大学〜大学院レベルの数学の素養が必要) また、雪の結晶の実例が色々挙がっている本として「雪の結晶」はオススメです。