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<自由>の条件

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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大澤社会学の集大成 ★★★★★
優れた本は毀誉褒貶にさらされますが、 下記のように様々なレビューが存在することを以て、 挑発的な関心を喚起する、問題の書であることは間違いないです。 購入を検討されている方に、本書の形式的な点についてひとこと。 章が短く区切られており、それぞれが示唆に富む論及がなされます。―たとえば、時間論、資本主義、リベラリズム、精神分析、折口民俗学など― 400頁のボリュームもまったく苦になりません。 また、いくつかの章ごとに、読者の理解を助けるため、 総括や要約を設けてあり、数日に亘りながらも、読みやすく、楽しめました。 交響曲を聴くように、「大澤さんの社会学」の序破急が堪能できる1冊。 ちなみに、『性愛と資本主義』『恋愛の不可能性について』『資本主義のパラドクス』 『ナショナリズムの由来』など、これまでの大澤さんの知見がこの1冊に、 盛り込まれています。
すごく面白い ★★★★★
この本の学問的価値については良く分かりませんが、すごく面白いのは事実です。著者の展開する論理に納得できない場合にも、個々の問題提起には説得力があり、発想を刺激されます。

例えば、自由な選択はその選択によって何かが実現することが充分な確実性をもって予測できなければ意味を持ちません。だから自由と因果性は矛盾するものではなく、むしろ自由は因果的に説明できる世界を前提としています。あるいは自由な選択こそが因果関係を生み出すのです。本書はこのような根本的で新鮮な議論に満ちています。

哲学の出発点は問題意識を持つことだとすると、この本は最高の哲学入門書だと思います。ただし、自分で考えることより、完成された学問を知識として吸収することに関心のある方には薦められないかもしれません。
社会学とは言い難い ★☆☆☆☆
「第三者の審級の先行投射」は、現にそうである社会の操作でありながら、なかなか言語化
されない機制を見事に概念化したものだと思っています。時間の存立、自由の条件、他者の
意味についての原理的考察は、著者が、射程の大きな、従って困難な探求に向かっていて、
正直、頭が下がります。

それでも、これは学術的論述とは認め難い。

どうして折口民俗学や精神分析学など、その信憑性が疑問視されるものを好んで議論の構成
的な部分に取り込むのか?
キリスト教の寓話に理路を求める場合と同様、著者は「それ自体の事実性が問題なのではなく、
そこに表現されている“体験の実相”こそ重要だ」と言うだろうけど、その表現の選択が不適切かと。
これでは、筆者の言とはうらはらに、形而上学的伝統と交叉させたのは社会理論の伝統では
なく、文学的想像の伝統だということになりはしませんか。
一例だけ挙げれば、名指しの非記述説と先験的選択の相応性の傍証として、ある症例を挙げ、
繰り返し参照していますが、それじゃあ洗礼名や、在日コリアンの通名や、成長の節目で名前
を変える文化といった事例は?これらについての社会学的探求の伝統は参照されていますか?

論述の枢要な部分で、文芸作品の恣意的な解釈や事件報道に依拠していますが、百歩譲って、
その解釈に説得力があるとしても、これでは部分社会としてのマス・メディアの範域から、議論は
離陸できないのでは?

また、「先行投射」の機制には刮目しつつ、それでも「第三者の審級」は、なんでもアリに
過ぎるのではないか。
現代社会における「自由」の困難の背景として「第三者の審級」は退潮したのですよね。
資本主義という経験可能領域の普遍性を拡大する運動にともなって、普遍化すればすれほど、
拡大した地平の彼方に退潮していくと。でも、そこ彼処に「回帰」してくるんですよね。
退潮した「審級」と回帰してくる「審級」は同じものなんですか?
パーソンズ的「規範」に比され、またフーコー的「微細権力」に比され、いくらその機序を抽象
した概念であるとはいえ、これではあまりになんでもアリすぎるでしょうに。

そして結局、自身の中に分裂の契機を自覚することが自由を可能にする、ということなんで
しょうか?結局、訓話レベル以上の何かは結論できているんでしょうか。

大澤氏が重要な問題に触れていることは間違いないと思います。
けど、申し訳ないながら、社会学にとっては、大澤氏が論じるのとは“別の仕方で”、この
問題を継承する必要があるのかなと。