しかし著者には未来がみえている。なぜなら既に起こっていることだからである。それも、単に「歴史は繰り返す」という正弦波のアナロジーでも過去の線形の延長としてではなく、である。
そしてこの1冊で万人に伝えるには余りある思考の結晶を著者は平易に、そして情熱をもって首尾一貫「オルタナティブ」をキーワードに鮮やかに展開している。
確かに彼の大手ヘッジファンド日本代表としての経歴あっての内容ということもある。しかし同様の経歴の誰が書いてもこれほどのものになるとは到底思えない。
ビジネス・経済の棚に並ぶであろうこの本の真意をどうかできるだけ多くの人が汲み取ってくれればと切に願う。
一般に日本の競争力を高めるために能力主義を進めるべきと言われる。とかく能力主義は弱者切り捨てと見られがちだが、「渋沢栄一は能力主義者であるが、能力あるものだけが世の中を支配すべき、という能力至上主義的な考えは毛頭なかった。むしろ逆で、能力があるものこそ弱者に思いやりの手を差し伸べ、公のために尽くすべきという考えであった」の一文は非常に共感を覚えた。