MALTAの独壇場 シエナを圧倒 流石に上手い
★★★★★
MALTA の甘い音色、キレのあるメロディ、asの軽さとtsの深さの両方を聴くことができるもので、2008年7月7日〜10日に録音された好アルバムです。
内掘勝と福田洋介の指揮するシエナ・ウインド・オーケストラの巧さは、佐渡裕や金聖響の指揮するアルバムで証明済みですが、今回は見事なジャズを演奏するビッグ・バンドに変身していました。もう少し破天荒な演奏を期待していましたが、それは多彩なゲスト・ミュージシャンによって色付けされていました。
ハイノート・ヒッターのエリック宮城 (tp)は凄いとしか言いようのない領域に到達しています。師匠のメイナード・ファーガソンのように聴き手を唸らせる突き抜ける音の持ち主でした。
樋沢達彦 (elb) 、則竹裕之 (ds)、ジーン重村 (ds) などのゲストが、音楽の雰囲気をガラッと変えており、それらのミュージシャンの付加する魅力が本アルバムの魅力につながっています。
吹奏楽ファンとジャズ・バンドのファンの両方が関心を寄せるアルバムです。実力のある吹奏楽団・シエナの本領は、各曲に感じられる分厚いハーモニーと豊かで柔らかい音色が物語っています。精緻なアンサンブルですから狂いはありません。それゆえ、MALTAが自由自在に駆け巡れたわけですが。
収録曲は有名なジャズ・ナンバーですし、ラテン音楽からも選曲されており、親しみのもてるアレンジで、誰からも好かれる音楽でしょう。
ラストの「ジャズ・アップ、バック・アップ、ドレス・アップ」は、ビッグ・バンド・ジャズの歴史を聴いているかのような選曲とアレンジで良い雰囲気が漂っていました。シエナものっていますし、時代がぐっと遡れたのも痛快でした。