まさにパラドックス
★★★★☆
ヒロインである栖佑日菜子の立ち位置のみをみると
「遠恋の彼氏がいるのに会社の同僚と浮気をして、なおかつ最後の一線を越えないからといってソレを浮気だと思わない困った女」
なのですが、触れることの出来ない彼氏よりも温もりを感じられる同僚に傾いてしまう微妙な心理など、素晴らしい描写力で私には非常に魅力的な女性に見えてしまうのです。そんな栖佑にベタ惚れしてしまう八日堂くんの栖佑さんに対する不器用な恋心がなんともいえず切なかったり、この巻ではついに遠恋の彼から栖佑さんを奪う…そこへ踏み込むことを堂々と宣言するなど、きれい事だけじゃない恋愛関係に踏み込んでいる辺りも実に面白いと思います。
ただ、星一つ減なのはこの手のお話の王道パターンで、「実は遠恋の彼も浮気をしている」という部分。このシチュエーションが描かれてから、
「彼も浮気してるんだから、彼女もいいよね」
という大きな免罪符が出来てしまい、彼と同僚の間で揺れ動く微妙なバランスが崩れてしまって、1巻後半から栖佑さんの心も八日堂くんに傾いてるんじゃないかという部分で二人の関係の結末が薄々ながらも見えてしまっているような感があり、このジャンル特有の背徳感を薄めてしまっているように思えるから。
いっそのこと遠恋の彼がものすごくいい人なら、よりいっそうインパクトがあってよかったんじゃないかなと。
この2巻ではついに一線を越える決意をしますが、このまま継続していくなら個人的には超えて欲しくないなと思ったりします。この一線の危うさがこのマンガの面白いところでもあると思うからです。というか、超えちゃうと後は結論を出すしか道は無いわけで、超えたコトで自分の気持ちに素直になった栖佑さんが彼とは別れて八日堂くんと結ばれるか、5年付き合っている彼氏の元へ行って結婚するかで、お話そのものが終わりになる気も…。まぁ、連載が青年誌なので、一線を越えても関係が続いて描写がより過激になるという展開もあるのかもしれないですが、それは避けて欲しいところ。
できたら、「もう彼とは既に別れてた」という展開だけはやめてほしいなぁと思ったりしています。