「ポール・サイモンの息子」の地味だがなかなか素敵な挨拶状
★★★★☆
ポール・サイモンと最初の妻ペギーとの間の息子ハーパーのソロ・デビュー作。たった30分ほどのアルバムで、レノンやディランの息子たちよりも出遅れた感のある彼が紆余曲折を経て控えめに差し出した挨拶状のような趣だが、なかなかに素敵な挨拶状だ。
全体的に感じられるのは、「やはりポール・サイモンの息子だなあ」ということだ。1曲目は聖歌だが、S&Gもしばしば賛美歌などを歌っていたことを思い出させる。2曲目は、曲調も楽器編成もS&Gっぽいうえに、ハーパー自身の多重録音でいかにもS&Gっぽいハーモニーを作り出している。5、6、9曲目では、ハーパーとともに作者クレジットに父ポールが名を連ねている。これら3曲では演奏者クレジットにはポールの名はない(演奏参加は3曲目のみ)が、「このリード・ヴォーカルはポールじゃないのか?」と思うほど、声だけでなく単語の発音のしかたまでそっくりだ。最後のアコギ弾き語り曲も、“juniper”や“crinoline”といったS&Gの“For Emily, …”を意識しているような言葉遣いや、“Dangling Conversation”を思わせるメロディが出てきたりする。
他に興味深い点は、ショーン・レノンやスティーヴ・ガッドの参加、バーズの『ロデオの恋人』を思わせる8曲目の作者クレジットにクラレンス・ホワイトの名があること(ちなみにロイド・グリーンがペダル・スティールを弾いている)、5、6、8、9曲目でハーパーとの共同プロデュースとしてボブ・ジョンストンの名があることなどだ。
今の主流の音楽ではないし、どれほど売れるか心もとないが、売れるかどうかなんて気にせず自分の音楽をやってもらいたい。「これからは父と違うものを」と意識しすぎて変な方向には行かないでほしいが、「いつまでも擬似S&Gでもなあ」とも思うし、当人もそれは考えるだろうと思うので、今後どんな作品を生み出すか注目だ。
☆“正にポール・サイモンの息子”っていう感じです☆
★★★★★
ご存じポール・サイモンの長男ハーパー・サイモンのデビューアルバムの登場です!
年季の入ったS&Gファンとしては、今年のS&G来日公演に続く、グッド・ニュースではないでしょうか?
今、そのファースト・アルバムを聞きながらレビューを書いていますが、大いに興奮しています。
というのも、その内容がS&G全盛期のサウンドを彷彿とさせる出来栄えとメロディ・ラインだからです。
こんな時が来れば良いなぁと思っていましたが、第1弾はハーパー、それにエイドリアン・サイモンが
続くのは確実です。
さてさて、その肝心のナンバーですが、S&Gファンであれば、そのサウンドを耳にしたとたんに、
笑みがこぼれるというか、今、ポールに作成してほしいサウンドが溢れ出てきます。
そもそも声がポールとアートとスティーブン・ビショップの声をミックスしたような感じで、
バック・メンバーもポールはもちろんのこと、ショーン・レノン、スティーブ・ガッドなどが加わり、
プロデューサーは、ボブ・ディラン等をプロデュースし、あの「サウンド・オブ・サイレンス」をリミックスさせた
ボブ・ジョンストンです。興味深いのは、9曲目の「シャイン」は、ポールの2番目の奥様である
キャリー・フィッシャーが作詞に加わっていることです。
かなりお勧めの出来です。興味を持たれた方は、是非、聞いてみて下さい。一聴の価値はあると思います。
(参考:報道記事)
[ニューヨーク 10月25日 ロイター] 米人気デュオ「サイモン&ガーファンクル」の
ポール・サイモンの息子、ハーパー・サイモン(37)のファーストアルバムが、音楽専門誌などから
好評価を得ている。
ハーパーは、自身の名前を冠したファーストアルバムを10月13日にリリース。ロイターの取材に
「父親のようにスターへの道を順調に歩んでいくことはとてもできなかった」と語っている。
ハーパーは子どもの頃から音楽での将来性を感じさせ、4歳の時には子ども向け人気番組
「セサミストリート」で父親と歌を披露。世界的に有名なボストンのバークリー音楽院にも進学した。
しかし2年で中退後、スターになろうと努力しても「挑戦しては失敗する」の繰り返しだったという。
音楽誌アメリカン・ソングライターは、ハーパーを「才能を開花させつつある真のスター」と評価。
ローリングストーン誌は同アルバムの収録曲「Shooting Star(原題)」を「素晴らしい」と称賛し、
「待った甲斐があった」としている。