ノスタルジーとトレンドを調和させたハートフルラブコメ
★★★★★
足掛け8年という、現代に稀有な長期連載を誇る「ぱすてる」だが、昼メロや純愛ドラマ等に追随するような多様複雑な男女関係を描く多くのラブコメ作品とは一線を画し、小林俊彦氏の「ぱすてる」は、90年代後期に手掛けた前作「ぱられる」のコンセプトを基本軸として忠実に受け継いでいるところが最大の特筆大書なのである。
一時期、日常風景を描いたいわゆる「まったり・ほのぼの系」と呼ばれたアニメ・漫画作品等が流行したが、「ぱすてる」は、それを前作時代から不変に蹈襲し、変遷の激しい大手漫画誌・少年マガジン系としては実に息の長い連載期間を誇っている。それは小林氏の当該作における基本理念が前述したように、「ぱられる」で描かれたエッセンス。主人公とヒロインを中心として「まったり・ほのぼの」な日常風景・人物関係の描写特化している所以の良い意味での平坦さにある。
つまり、これほどの長い連載期間を経ても、アニメ化などのメディアミックスがなされない理由は、逆に息の長さの証左であり、同時期に発表された、他誌における河下水希氏の「いちご100%」や「初恋限定。」、「あねどき!」などと比較しても、依然たる安定感を感じさせるのである。小林氏と同郷の瀬尾公治氏の諸作品は、小林俊彦氏と同じように望郷色は出しているが、複雑で重厚な人間関係を第一義としているため、物語的には面白いのだが、「ぱすてる」ほどの長命は望めない。
ぱすてるをして「中弛み」や「マンネリ」、「ネタ切れ」などという意見もあるかとは思うが、逆に当該作はそうしたところを楽しめる作品なのである。風俗やメディア環境など、時代のトレンドを取り入れる場面もあるが、必ずしも原色的なものではなく、後年になって時代を感じさせるような描写は少ないのも特徴。
端的に言えば、淡泊な風味を味わうとこが醍醐味と言えよう。