標準的であり現代的
★★★★★
マズルカは土着的になりすぎるきらいがあり、それを是とする傾向もあるが、アシュケナージのマズルカはそういう意味ではあまりマズルカ臭さがないのかもしれない。
しかし、だからといって退屈かというとそんなことはなく、安心して聴いていられる良さがある。もしかすると一言で言ってしまえば「無難」と評することも出来るのかもしれないが、その「無難」というのが実に難しい。それをあまりこれ見よがしなところを感じさせないのはさすがアシュケナージならではだと思う。
音色は相変わらずアシュケナージのちょっと湿り気の帯びた低音に、きらびやかな高音が乗る聴きやすい音である。この聴きやすい音色のおかげで、民族的な味付けに食傷気味になりやすいマズルカも飽きずに聴くことが出来る。
テクニックの面に関しては安定しているアシュケナージのこと、どこも不安を感じさせる部分がなく、これもまた、録音年が数年にわたっているにもかかわらず見事なまでに統一された感じを受ける。
あらゆる意味で「標準的」といえる名演だと思う。
この演奏を出発点にしていろいろな味わいを楽しめばいいと思うので、もっとも初心者の方に安心して薦められるマズルカ全集。