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アドルフ・ヒトラー 権力編 “わが闘争”の深き傷痕 (歴史群像シリーズ 42)

価格: ¥1,223
カテゴリ: ムック
ブランド: 学習研究社
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ただの一介の市民がどうしてドイツの総統になり、世界戦争になったのかを知る ★★★★★
ただの一市民にすぎなかった男が、なぜドイツ全土の総統として君臨できるまでに国民の支持を集めることができたのか。そして、なぜ、あのような悲劇を生まれたのか。これらの点について、疑問に思ったことがある方は多いでしょう。

本書はちょっと古い本ですが、第二次世界大戦時のヨーロッパに関する注目に値する新しい著作が近年日本であまり出版されていないこともあり、複数の専門家が役割を分担して様々な角度からヒトラーについて分析を試みてコンパクトにまとめ上げているという点で、一読の価値があります。

軍事作戦よりも、ヒトラーとその政策や、時代背景、周辺の人々、他の国との関係などに焦点を当てて幅広く解説しています。

特に、経済政策と様々な労働者と青少年の保護育成政策についての解説は目を引きました。前政権の政策が効果を生み出したタイミングでもあったために失業率が劇的に改善したこと。有給休暇制度を広め、同時に国民に多くの安価な旅行パックを提供したこと。労働者階級の自動車の所有を容易にし、アウトバーン網を全国に広げたこと。ヒトラスユンゲンによって、青少年の健全な育成に務めたこと。さらに、財政についてもグラフを用いて解説が行われています。

悪名高いユダヤ人政策に関しても、その背景にある人々の意識にも切り込んで、その経緯を丁寧に解説している。この、一見淡々と描かれているユダヤ政策に関する全貌は、その悲惨さだけを強調したものよりも一段と凄味があり、歴史の闇の深さと広がりを如実に示しています。

イギリスやソ連との外交に関しての解説も目を引きました。本書は軍事作戦部分については詳しくありませんが、対イギリスとの航空戦は元々勝ち目がなかったことを他のシナリヲについても検討を試みています。対ソ戦の背景にあるスターリンへの強い不信とヒトラーの判断の背景にあるものについてもきちんと言及されています。

ヒトラーの周辺の人物にも随所に的確な説明を行ってあり、多角的な視点からヒトラーとその時代を知る上で、質の高い一冊になっています。最後のページに登場するのは、エヴァ・ブラウンです。
第三帝国概論 ★★★★★
本書「権力編」はタイトルこそヒトラー個人名だが、「政治家ヒトラー」を焦点として、ナチス第三帝国の全体像を検証・分析している。本書は大きく4部で構成される。

特に1部では「我が闘争」に示された二つの政治目標、「外交政策=東方征服」と「人種政策=ドイツ圏からのユダヤ人絶滅」を達成するためのヒトラーの文字通り闘争を順を追って解説している。数々の闘争に勝利し東方征服に乗り出したヒトラーだが、イギリス・ソ連との闘争に敗北を喫し、政治目標の一つ目は達成できなくなった。そして残る人種政策完遂のためにナチスはあらゆる努力を傾注する。「戦争は政治の延長」とするなら、戦争後半の一見愚かな作戦指導も、虐殺という政治目標達成のために必要な行為だった。狂気といえる目標ではあったが、戦争を政治の手段とする意味においては貫徹した意思が伺える。

2部では第三帝国の特異性を象徴する「人種論」「宣伝神話」「オカルティズム」「ナチス的芸術」について、検証している。3部ではワイマール共和国がいかにしてナチスに取って代わられたかが、統計や図表を多用して解説されている。4部では人種理論の具体的な政策化、軍需に特化したいびつな経済政策について統計や図表の引用が説得力を備えている。

また、第三帝国の主要人物にも紙数を割いており、人種政策責任者ヒムラーと宣伝政策責任者ゲッベルスについては小論ながらも重要な経歴等をしっかりと抑えている。
本書の特徴は、通俗的な「ヒトラー像・ナチス像」を否定的に検証する客観的な基調で通されているところだ。ヒトラー・第三帝国に関する書物は数多いが、客観的に全体像を把握するためには今なお必携の入門書であると思う。
出展作品「ナチズム」 ★★★★★
 基礎的な概説から、応用的な詳説までを豊富な図版を用いて解説する、歴史群像シリーズのひとつ。このシリーズはとても良く出来たムック本であり、特集に多少の偏りがありますが、私は外れのないものと信頼しています。そして、本誌もまた期待を裏切らない出来となっています。ヒトラーの人生を一通り眺めたあと、その背景となった歴史的条件へと続き、入門から応用の入り口まで、必要な知識を網羅しており、それぞれの分野を各専門家が執筆できる、ムック本としての良さを十全に発揮しています。一人の著者では伝記、社会、政治、経済、軍事と広範な内容をこれだけ漏れなく覆うことは困難でしょう。
 本誌は同シリーズの中でも出色の出来であり、注目すべき記事を多く含んでいますが、中でもヒトラー・ナチスの持つ神秘的なイメージを解剖して、その被害者・加害者合作の神話の欺瞞性と真相を暴こうとする佐藤卓巳氏の稿、そしてナチス政権が一般大衆に与えた“夢”の具体例を指摘する原田一美氏、片や各種障害者から始まってユダヤ人、「人種的に望ましくない」人々への絶滅政策を系統立てて説く矢野久氏の各稿は、近代という世界の中で、ヒトラーとは何なのかを考える上で、非常に示唆に富んだ興味深い事実が書かれており、一読の価値在るものと思います。しかし、私が一番強く衝撃を受けたのは、ヒトラーの伝記部分の最後を担当した丸田淳一氏のそれで、ドイツの研究者の説を紹介しながら、よく言われがちな、ヒトラー狂人説を否定しようと試みる部分です。そこには常識を越えた「芸術家」ヒトラーの姿があり、自らの創ったドイツという作品が失敗と判れば、駄作に対峙する陶芸家のように轟然とそれを打ち壊そうとする。そんな人間を国家の頂点に据えてしまう。そんな芸術家的行動を許してしまう。そんな近代社会は何者なのか、改めて考え直さざるを得なくさせる見解でありました。