無駄な努力か?
★★★☆☆
ウィトゲンシュタインは癪に障る哲学者だ。彼の本を理解するにはその本について書かれた本をさらに何冊も読まなければならない。大体、まとまった著述に対し、断片的な感想がつくというのが本来の姿であるべきが、彼の場合には断片的な記述に対し何冊ものまとまった感想文が書かれるのである。これはニーチェやパスカルににている。彼らが体系的なわかりやすい本を残してくれていたら、これほど神格化されなかったかもしれない。
それでも何とか理解したいと思うのは、彼がことばにはしにくい、ぎりぎりの神秘を語ろうとしていて、それを応援したいという気持ちがあるからである。ウィトゲンシュタインに肩入れしたくなるということは少なからず常識的な哲学に飽き足らない嗜好の持ち主であろう。そのような人は、私も含めて、例えば哲学が純粋に知的な思考を楽しむゲームに終わったとしても、ある程度は仕方ないという覚悟はできていると思う。
だから読むしかない。ただし『考察』は彼の中でも過渡的な時期のものとされているし、また一段と断片的である。後回しにしてもかまわないかもしれない。