何故、今韓国併合100年を見つめなおす事が必要なのか
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本書は、2009年11月明治大学で行われたシンポジウム「近代日本のなかの韓国併合ー人物と戦争の観点から」の記録である。会場は、満席で大変な盛況だったと言う。研究者たちだけでなく一般市民も多数参加しし、活発な議論も行われたとの事。
内容は、「焼き直し」ではない。現場の研究者たちの「ING」な研究・視点・考察が報告されている。
質疑応答も収録されている。その中で、本書の意義について、シンポジウムの参加者から
「韓国併合100年の問題を日本で議論する意味は?」と直接質問が出た。
この問いに対して、報告者の一人である、宮嶋博史氏は明確な回答をしている。氏は、ここ150年程東アジアの中心がの日本であったが、そのパラダイムは、ふたたび中国を中心とする東アジア中心に変化しつつある今、と前置きをした後、
「100年前の韓国併合とは何であったか、その時日本は韓国をどのように認識し、なぜ併合したのか、それを現在の時点で見るとき、どういう意味を持っていたのか。どのように認識しなければいけなかったのかという現在の課題との関係で、100年前の韓国併合を改めて振り返ることがもっとも重要な課題と考える」と答えている。つまり、日本の未来のために韓国併合を見直すという事である。そこに重要性があるのだ、と。
「欧米衰退・アジアの時代」が世間で叫ばれいている昨今、宮嶋氏の説明に、誰も異論はないだろう。もう少し突っ込めば、韓国併合は、もはや日本史の特殊な事例ではなく、日本という国の普遍的な問題に強くリンクしているとも言えるのだ。それゆえに本書の価値は、けっして低くない。
幅広い人たちに読まれたい本である。