藤沢作品 ・ 映像化の光と闇
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藤沢周平も没後10余年経つ。遅れてきたファンにとって「これは!」と思う作品に巡り合うと、どうしても作家の周辺や人となり、作品やその映像化などが気になる。先日買い求めた「孤月剣残抄」を読み終えたばかり。朝日新聞社から2007年に刊行された「週刊藤沢周平の世界」を広げながらその作品世界を紐解く。著名な作家や作品の解説が副読本としてはとても面白い。
そんな折、オール読物7月号での大特集を読んだ。本書は鬼籍に入って10余年経つも、藤沢作品を巡る周辺は映画化も続き藤沢先生の郷里・山形県鶴岡市では2010年春に「鶴岡市立藤沢周平記念館」も開館し、活況を呈している。
活況をといっても藤沢先生のお人柄や、作品を読み続けるに従いあまり華やかな場所を好まれない方、と推察する。そういった所も今回寄稿されているご息女遠藤展子さんの「父の里帰り」に詳しく紹介されている。
今回の特集でありがたかったのは時代劇の論文で博士号を取り、近著では天才 勝新太郎 (文春新書)、時代劇は死なず! ―京都太秦の「職人」たち (集英社新書)を執筆された春日太一氏の「徹底検証・藤沢作品 ・ 映像化の光と闇」がとても参考になった。最新作「必死剣鳥刺し」(孤月剣残抄より)を始め、1980年以降の映像化作品のテレビ・劇場作品のリストを編纂・解説してくれている。
私の好きな映像化された藤沢作品3本といえば「清左衛門残日禄」「蝉しぐれ(NHK版)」「隠し剣鬼の爪」といったところか。この春公開された「花のあと」も原作は好きだったが諸般の事情で見逃してしまっている。春日氏の寄稿文はブームの続く藤沢作品の魅力を問い直すとし、火つけ役となった山田洋次監督の
作品に感じる藤沢原作の違和感について検証している。
私のような初心者も、この特集は参考になると思う。ぜひ、ご一読下さい。
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