離散の世界では,M凸性とL凸性が区別され,
それらが共役変換で移りあうという基本原理が
豊富な実例を交えて余すところなく紹介されて
いる.その叙述は美しく見事と言うほかはない.
基本的に大学初年時の解析と線型代数以外は
特に予備知識なしに読み進むことが出来るが
内容は驚くほど深い.どのページにも,
含蓄のある数行が含まれており,
その意味するところを理解するには相当の
努力と根気が必要であろう.しかし,
それだけの価値のある書物であり,
多くの読者にこの本の素晴らしさ,力強さを
知ってもらえたらと願わずにはいられない.
ただし,最終章における経済学への応用は
いささか物足りないのが残念である.