十津川警部。忙しい人である。日本中を飛び回り、「もう日本にはこれ以上アリバイトリックは無いのでは?」と思われるほど難事件を解決している。その醍醐味はなんと言っても警部が時刻表トリックを見破り解決するところである。「ああ、こんな駅でこんなトリックが有り得るのか。面白いなあ」とびっくりさえする。そのびっくりが大きければ大きいほど、スリルが有れば有るほど、「おれもこの電車に乗ってみたいなあ」などと物語の中のシチュエーションに憧れを持ってしまうのである。
この本ではきっと十津川警部はきっと疲れているのであろう。今回は鉄道のトリックではなく、東京と秋田地方の2箇所で起きた殺人事件を中心に話が展開する。ただでさえ、フィールドが限られた中で次々と殺される関係者「ああ、殺されるべくして殺されてるなあ。迂闊者が多いなあ」というのが正直な感想。警部も大変だ。