A LIFE IN THE MEDIVAL HISTORY
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お気に入りの本というものにはしばしば個人的な出会いがあるものだ。わたしの場合、サザーンの本との出会いも、右も左もわからないアメリカでの大学生活で中世史の講座をとることがなければ出会うことはなかったろう。往時、次の授業までにテクストを全部読んでおけ、とたくさんの宿題を他の授業で出され、しかも、このような難しい講座をとったことをずいぶんと悩んだものだが、それでも、この本はわたしを魅了した。
サザーンにせよアイリーン・パワーにしても、イギリス、アメリカの学者には文章がうまい人が何人もいるのだけれど、この人はピレンヌのようないささか古色蒼然としたフランス語で読むひとを困らせるような専門的な語句があるよりも、平易な言葉で、また、文章が硬くないせいもあって、読みやすい。(時折思うのだが日本の大学の紀要論文というのはどうしてああいう死体の解剖のような文章や、書いている人も困惑しているような文章があるのだろうか。これは日本だけの現象ではないが日本では著しい。)サザーンにはアンセルムスの素晴らしい評伝があり、これもよいが、いま、このサイトで手に入るものではなく大幅に加筆、訂正した1990年代のものがあり、こちらのほうがサザーンの文章も資料もよい。そのうち、ミシガン州のカラマズに本拠があるシトー会出版のモナスティック叢書がオンラインで買えたらどんなによいだろう。わたしたちあこういった仕事から西欧の歴史を学ぶ楽しみを得ることができるのだから、現代も捨てたものではない。