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増補 小さなものの諸形態 精神史覚え書 (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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小さなものからの視点。 ★★★★☆
 読み始めてすぐに作者の文体に驚いた。論文というよりは寧ろエッセイといった文体で書かれており、非常に読みやすく感じた。それでいて伝えるべきことはしっかりと伝えている。必要なことだけ書いたら数ページで終わるテーマもあった。余計なことは書かない。言えることだけ言う。潔さすら感じさせるやり方だと思う。書くときの手本にしたいという気持ちを起こさせる文章だった。
 題名の中にもあるように作者は常に小さなものに視点を向けて、そこから思考を進めてゆく。それは一人の人間の生き方であったり、家族との時間の過ごし方であったり、誰かの呼び声への反応であったりする。その小さなものたちへの作者の共感に満ちた視線から、大きなもの、口当たりのよい思想のもつ危険性が浮かび上がってくる。作者の目的は現代の大量生産大量消費に向けて人間をいやおうなく駆り立ててゆく資本主義社会に対する問題提起にある。その問題提起の仕方に作者の独特の視点が明白に現れている。作者はスローガンや、道徳からの裁断という大きなものからの視点による批判を行わない。また批判をある大きな目標に向かって統一させてゆこうともしない。あくまでも統一を拒み、小さなものからの視点にこだわり続ける。
 内容と同時に思考する姿勢においても多くが学べる一冊だった。