アイドルである彼女たち、普段巷に「最高の楽しみ」を届け
つづけている彼女たちだからこそ表現でき、伝えることので
きる「悲壮感」がそこにはありました。絶妙の演出のなかで、
彼女たちは夫々の「物語」を、あたかも自分自身のそれである
かの如くに演じています。否、演技を超えた彼女たちならでは
の「物語」を、我々は観ているのかもしれません。
鑑賞後、心に残る「悲壮な何か」を、皆さんもぜひ感じてください。
画面の4人の明るさが、逆に悲しく感じられ、BGMがその悲しさをいっそう深くしています。
内容を詳しく載せられないので、とにかく見てください。
物語は4人の少女、美紀(飯田)、亜矢(矢口)、優里(後藤)、奈々子(辻)が密室で卓球をしているシーンから始まる。とりとめのない会話をしながら球を打ち続けるが、ラリーは5回と続かない。それと並行して、4つのエピソードが同時進行する。一流大学を目指す浪人生のカップル、その日限りで定年退職する男性(仲本工事)と若い部下、バイク店の主人と中古バイクを買いに来た客、病院を退院する女性と彼女に付き添う弁護士(風間トオル)。一見無関係なこれらの人物の言葉を通じて、4人の少女の素性が徐々に明らになっていく。物語の性質上、これ以上詳しく書くことはできない。
モー娘。の4人が心に傷を持つ少女たちの役を好演しており、テレビ番組などとは全く違った彼女たちの表情を見ることができる。脚本もなかなかの出来(記憶喪失に関する部分にはやや無理があるが)。派手さや奇抜さはないものの、見応えのあるドラマに仕上がっており、いわゆる「アイドル映画」とは全く異なる本格的な作品になっているといえよう。4人のファンの方は勿論、それ以外の方にもお勧め。