イタリア・ロックの転回点となった作品
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アレアの「1978」、マウロ・パガーニのファーストと同じ空気を共有する1979年の傑作です。パスクァーレ・ミネリとジョルジオ・ヴィヴァルディは、カンツォニオーレ・デル・ラツィオの中心人物として活動。カルナシャリアは、アルバム・タイトルであったと共に、このセッションのバンド名でもあったらしく、デメトリオ・ストラトス追悼ライブである「1979 Il Concerto」の中では、このクレジットで、マウロ・パガーニの曲を演奏しているのを聞くことができます。
1978年から1979年は、イタリアのロックにとって特別な年でした。上記2枚のほか、PFMは「PASSPARTO」を、バンコは「春の歌」を発表しています。ひとつはインターナショナルな成功を目指す活動から国内のルーツ音楽に重心を移す動きであり、ひとつはスタジアム・ロックから大道芸のような土着音楽に移る動きでありました。つまり、イタリアの名だたるグループ、アーティストが原点回帰を模索し始めたのです。それと共に大編成のグループより、シンガー・ソングライターとして振舞うアーティストが増えていきましたし、もっと重要なのは英国の音楽の影響から脱皮して、イタリアでしか作り得ない音楽が続々と生まれていったことです。
静かでアコースティックな美しさと土俗的なリズムの躍動に彩られた作品です。イタリアのルーツ音楽と共に現代クラシックの方法論を感じます。いろいろな実験の主役は上記のふたりとマウロ・パガーニ、そしてデメトリオ・ストラトスです。彼はこの作品が生前最後の録音となりました。「1978」のメロディもちらっと出てきます。どの曲も最後まで作りこまれたことがよくわかります。素晴らしいドキュメントであると思います。そして音楽の楽しさにあふれた作品です。