知恵と協力の意味を改めて教えてくれる“やさしい物語”
★★★★★
この本に登場するのはハンブルグの港町に住む猫の一団と一羽のカモメ、そして1人の人間(詩人)である。
この本に出会ったのは今から11年前のことだったが、今あらためてこの本を読み直してみると、そこに込められているメッセージからは“今だから、そして今の日本だから必要なこと”が綴られている。
コールタールでドロドロになり飛べなくなった一羽のカモメが猫に託した願い、それは“これから生まれるカモメをカモメとして育てて欲しい”との願いだった。
この突拍子もない出来事から、猫たちはあらゆる知恵を絞りその約束を果たそうとする。そして最後に猫たちが選んだ手段は“禁断の手”である人間の力を借りることだった。カモメにとっての猫、猫にとっての人間という存在はそれぞれにとっても敷居の高い存在だが、一つの約束を果たすために彼らは自らの持つ“可能性”と“相手に対する信頼”が敢えてその敷居を越えさせようとする。
視点を変えれば、この姿は患者と医師、或いは仲間と生きることの意味を問うことにつながると思う。
物語の終幕、ゾルバという猫は“カモメが飛ぶことができるようにするには何が必要か”との問に一つの答えを人間から得る。それは“飛ぶことができるのは、心の底からそうしたいと願った者が、全力で挑戦したときだけだ”という自らの意思に基づいて生きることの意味だった。
医師が患者と向き合う時、医師は医療としての手助けをすることはできるが、病と向き合うのは他ならない患者であり、その患者が“生きたい”と心底から望むことが最も必要である、こととこの物語の語らんとするところは全く同じである。
自らを大切にする、このシンプルなことが今、最も必要だと思う。
一つの目的のために多くの知恵と協力が必要なことを私達はどこかで忘れていたのかもしれない。
大人でもさらっと感動できるかな・・・
★★★★★
本の題をみただけで、面白そうに感じて即、購入しました。飛べない猫が飛ぶことをどのように教えるか、という内容も面白いですが、大人の目線で読むと、子どもがやる気になるまで「じっと待つ」と言う姿勢を考えさせられたものでした。ひょんなことからカモメを育てた猫たちが、カモメ本来の本能から空を飛びたいをいう気持ちになるまで、あえて、飛ぶことを無理にさせない・・・そして、カモメを空へ返すために、掟を破る。猫たちの厳しい掟を破るための話し合いや、その選択肢など、始めから最後まで一気に読めてしまうくらい、展開も面白いと思いました。
「約束と守る」ということ、その約束は猫にはとても不可能のように思えても、仲間達と「協力し合う」ということ。今の大人の社会が最も忘れていることかもしれません。
決して教訓めいた内容でもなく、ただ、猫がカモメとの約束を守るために一生懸命な姿が書かれていますが、諦めずに仲間と協力してひとつずつ、問題を解決していく過程が楽しめます。
とても心温まる☆
★★★☆☆
ヨーロッパでは 『8歳から88歳までの若者のための小説』 として紹介されているらしいこの本
とある港で暮らす猫 ゾルバ が、突然現れた一羽のかもめと結んだ約束。
たくさんの仲間と協力してその約束を果たすために奮闘する姿を描いた小説です。
すごい冒険というわけでもないし、熱烈な恋愛があるわけでもない。
大したことはないのだけれど、読み終わるとなんだかついつい ニッコリ(^^) しちゃう不思議な本。
後書きにも書いてあるのですが、是非お子さんのいる方が親子それぞれで読んでお話するといいんじゃないかなぁ☆
とても心温まる本でした♪
大変優れた翻訳本
★★★★☆
背後に環境破壊・民族紛争批判を詰め込んだ
大人のための童話である。残念ながら
そのメッセージ性はやや陳腐と云えなくも無い。
しかし多くのレビュアーのご指摘どおり、
本書の価値は登場する猫たちの
きらめく個性とその語り口にある。
そう云う意味では大変優れた翻訳本である。
舞台化するにもぴったりの題材に思われる。
幅広い年齢層に!
★★★★☆
童話であるが、人間社会に痛烈な批判が盛り込まれていたりと大人が読んでも、考えさせられる。
共存とは?
空を羽ばたくカモメに思いを馳せてみてください。