新訳としての意義は評価する。が・・・はんちく?
★★★★★
原作の文を意訳で割愛することなく、
できるだけ忠実に、且つ、原作の雰囲気を残した
この新訳版はそれだけで十分に意義があることである。
また、これを読み直して感じたことは、
いくつかのバージョンの訳本が出るに値するだけの
価値を持った素晴らしい傑作であることは間違いない。
ただ、メネンデスがマーロウを「はんちく」と呼ぶのだけれども
これは一般的な表現??
あまりに普段なじみがない表現だったので、妙に違和感を感じた。
清水俊二訳でも使っている「チンピラ」ではダメだったんだろうか・・・?
その他、原作に忠実は素晴らしいのだが、その分村上氏が言うほどは、
現代の日本語的ではない(カッコよくない)表現、文章も見られたのがちょっと残念。
文庫化は賛成だが
★★★★☆
チャンドラーの『長いお別れ』が村上春樹の新訳でよみがえる。
ハードカバー、軽装版を経て文庫化。
最初から軽装版なんかいらなかったのでは。
でもとにかく内容然り、文庫化はありがたい。
偉大なアメリカ文学として
★★★★★
長らく清水俊二訳に親しんできたミステリファンの視点で読んでも、この新訳の意義は大きい。
すべての翻訳は折にふれ見直され更新されるべきであり、存在として単なるジャンル小説の枠を超えてしまった本作が省略や誤訳の可能な限り少ないエディションで読み伝えられていくのは喜ばしいことだ。
それにしてもテリー・レノックスの堕天使の如き造形はやはり魅力的だ。この一点のみにおいてもチャンドラーの最高傑作のみならず、偉大なアメリカ文学の一冊たりえる資格を持つ。
訳者は最近のインタヴューでチャンドラーの長編はすべて翻訳するつもりと述べているが是非実現して欲しいものだ。
(しかしポケミスの清水訳や田中小実昌訳も絶版にはして欲しくない。これは早川書房への切なる注文)