意外性がない
★★☆☆☆
当たり前のことが当たり前の結末を迎えるだけで、なぜこんなものが山野一の作品の中で評価されてるのか分からない。
所々突っ込み所も多々ある。
彼女が暴走族に連れて行かれ、それを金持ちの友人が助ける。これでは何の面白みもない話だ。現実世界では、彼女は暴走族に輪姦され、警察に相談しても暴走族の父親が市長だからと揉み消され、裁判所では今時の女は色んな男とやりまくってるもんだと嘲笑われる。そして10万程度の慰謝料で終わりというパターンだ。
父の死亡原因も現実的ではない。印刷機に挟まれた時、なぜ緊急ストップボタンを押さなかったのか? 現実世界なら、手首から先を失うぐらいで済むだろう。むしろ仕事を3倍にしたことで、機械はそう簡単に言うことは聞かず、ヤレ版が多くなってやり直しやクレームの嵐となる。現実世界の方がずっと過酷で厳しいだろう。
葬式の日にヤクザが来て、金を返せと殴られる。それでも父の会社を継いで立て直そうと必死になる。現実世界ではこんなことはない。父が死んで借金が明らかになったら、一々負債抱えた会社を存続しようとはせず、相続拒否するだろう。ヤクザだって人を殴ったら逆に慰謝料を請求されてしまうから、迂闊にそんなことはしない。担保もあるなら平和的に収まるのではないか? この場合は一旦ゼロにして、生活保護を貰いながら一から出直すだろう。第一、生命保険や労災はかけてなかったのだろうか?
そして父が印刷会社の経営者なら、印刷会社の面接は一発採用だ。むしろ現実世界では、そういった経験やウリがないが故に就職先がないのであり、現実社会の方がずっと残酷だ。それに大手印刷会社は人を欲しがっている。残業百時間という過酷な労働条件だが、それなりに給料もそこそこいいだろう。
そうなると、単に主人公が苦しい選択をしてるだけではないか?ともとれる。
主人公が狂う動機も弱く、同情できない。50から人生をやり直す人などざらにいる。50年も警察のデッチ上げで刑務所に入れられ、70過ぎてから人生を送る人だっている。現実世界はもっと不条理で悲しい。
金持ちは金持ちで終わり、貧乏人は貧乏人で終わる。こんな話は当たり前で何の変哲もない。だが現実世界では、(民間企業では)金持ちが貧乏人に転落することだって多々ある。
このレビューを読んで、ふむふむと頷く人も多いだろう。
所詮フィクションは神様の作る現実の凄さや残虐性には敵わないということか。
これがリアル
★★★★★
徹底的に不幸。絵のタッチも言葉のセンスも不幸に拍車をかける。しかし物語自体を作者自身小バカにした感じがうかがえるのがミソか。芸術的だと錯覚してしまうシーンがいくつかある。
今のマンガは技法が進化して人が死ぬシーンなどよりグロテスクになったが、絵のリアルさばかり追求して薄っぺらい。描き手の魂が伝わってこないただの娯楽に成り下がってしまった。
これが本当のマンガだよ、みなさん。
不幸のオンパレード
★★★★★
貧しいながらも平凡な学生だった主人公。
しかし、家に●チガイが乱入して、
家族は皆殺し。
挙句に全ては、錯乱した主人公のせいにされて服役。
刑務所を出てきた主人公に、
「厚生の日は近い…」
って、どこまでおちょくるのか!
こういう徹底的に悲惨なマンガは、
現在は、書けないんだろうなぁ。
メンタル弱めの人は止めておいた方がいいです。
何度も読んでしまう。
★★★★☆
読後感は最悪です。
とてつもなく陰鬱な気分にさせられます。しかし、なぜか何度も繰り返し読んでしまう面白さもあり、著者はこの物語を真剣に書いているのか、ギャグとして書いているのかわからなくもなります。
著者は最終的に主人公である「たけし」がある程度救われたかのような締めくくり方で強引に物語を終了させているが、はっきりいって、後半のあのような体験をして逆に生き残ったことは不幸ではないだろうか。
社会の底辺に属する労働者はどこまでいっても報われないんだということを実感させてくれる本です。
不幸のどん底とは
★★★★★
努力したこと、がんばったことが全て全て裏目に出て、絶望的だった場所から絶望すら麻痺してしまう地点へと転がり落ちてしまう。
三丁目のとなりの四丁目には果てしなく深い闇がある。一切の救いを許さない不幸のどん底をここまで突き詰めるとは・・・、すごいの一言です。
変人堂
★★★★☆
「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画が大変な人気のようで、続編も公開されるそうですね。「ビッグコミック オリジナル」に連載が開始された時から、西岸良平氏による原作をしばらく読んだのですが、すぐに飽きてしまいました。あまりに単調で一本調子の絵にも辟易したのですが、恐ろしいぐらい美化された昭和30年代の暮らしに、その時代の端っこを生きた者として強烈な違和感を覚えたからです。それにしてもこのブームの正体は何なのでしょう。現在の息苦しさからの逃避なのでしょうか。あるいは今後私たちをさらなる貧困のどん底に落そうと舌なめずりをしている官僚・政治家・官僚諸氏が、「貧乏人どうしが助け合えばこんな幸せな暮らしができるんだよおおおおお」というメッセージを刷り込むために、メディアを動員してつくりだしたブームかもしれませんね。しかしこの似非ユートピアとも言うべき漫画に、真っ向から異を唱える強烈な漫画があることを知りました。それが本書です。
ミンメイ書房
★★★★☆
主人公を襲う様々な不幸。
かなりハードな作品ですが、非常におすすめです。