ウィーンフィルでないと出せん音ですわな
★★★★★
ウィーンフィルはマーラーゆかりのオーケストラやのに、マーラー録音は取り立てて多くない気がいたします。ウィーンフィルだけで全集録音になって居るのは、マゼール盤だけではないやろか。
ウィーンフィル・ファンのわてにとっては、本盤は堪えられない一枚。やはり純音楽的で、交響的ながら、ちょっと人工的な感じもするマゼールとのウィーンフィルと較べて、本盤ではアルマの主題は実に郷愁を誘うし、終楽章のカウベルの前にも、ノスタルジー一杯のウィーンフィル・サウンドが聴かれますがな。各楽器の音が聴き取りやすい演奏は、この指揮者の特徴でしょうけども、1楽章や終楽章での全員一丸となってガッツのある主題もやはり、ウィーンフィルならでは。半分はウィーンフィルのマーラー、半分はブーレーズのマーラーでしょうなあ。
このコンビの5番もそうなんですが、3楽章のように叙情的な楽章は、やや控えめな味付けが却って聴き手の情感に訴える気がいたします。中欧の素っ気ないマーラーとよく言われるノイマン先生が、最晩年はなりふり構わず主情を訴えているのに対し、本盤は実に交響的でしっとりした情感に溢れとる。低域の金管は全楽章通じ、名人芸に聴き惚れ通しですし、2楽章だったかと終楽章で聴かれるヴァイオリンのソロもエエ。ウィーンフィルでないと出せん音ですわな
マーラー・チクルス最初の録音
★★★★★
1994年5月ウィーンで録音。本作品はブーレーズとVPOの初録音であるばかりか、今回ついに登場した第8番で完成したマーラー・チクルスの最初の録音である。よって非常に気合いが入った仕上がりになっている。
マーラーの作品の中で最も完成度が高いといわれるこの曲は、ウィーン時代に作曲され、1906年5月27日、エッセンの全ドイツ音楽協会音楽祭にて、マーラー自身の指揮によって初演され、1907年1月4日、マーラーの指揮によってウィーン初演されていて非常に演奏しているVPOとは因縁深い曲である。管とパーカッションを中心に据えた大管弦楽に当時の人はみんな度肝を抜かれたらしい。
昔は水と油と思われていたブーレーズとVPOがお互いの良い面を出し合った素晴らしい演奏になっている。精緻さと叙情性の組み合わさったすばらしい演奏だ。私見ではここにはカルロス・クライバーが1970年代から試みたウィーン・フィル改造の影響が少なからずあると思う。秘めたる潜在能力をクライバーに引き出されたVPOをブーレーズが見事にコントロールした名演だ。
異色の美演
★★★★☆
94年のデジタル録音で音質は優秀。レコ芸「名曲・名盤300」で、バーンスタイン盤と同点の1位にランク、又同じくレコ芸「リーダーズ・チョイス(94年度)」でも総合1位に選出されている。VPOの美音を最大限に活かした「美演」。SOLTI/CSOの乾き切ったティンパニが刺激的な爆演とは全く対照的。アシュケナージ/チェコPOと同様、オーケストレーションの妙を味わうべき演奏で、従来の「ティンパニ交響曲」のイメージを覆す異色作。この大曲(79分)がCD「1枚」に収録されているのも大きな魅力。