矢野健太郎先生の書かれた本は、殆ど例外なく、良くまとまった明快な本である。数学書を選ぶ時に、矢野先生の場合は、著者の名前で選ぶことができる。
線形代数に関するこの本は、オーソドックスな本で、大学生が初めに学ぶにはとても良いと思う。ただし、どんなに良い本でも、大学レベルと高校レベルの間には大きなギャップがある。分からない時に質問できる相手を、見つけておく必要がある。
大学生なら、いろんな先生や大学院生に質問してみて、一番親切な人を探すのが良いだろう。
線形代数は、量子力学と関係すると面白い。そのようなことに興味があれば、この本と並行して、ファインマンの物理学などを読んでみてもいいだろう。

線形代数の教科書としては、理工系の学生にはかなりすばらしいと思う。演習問題もなかなかいい問題なのでかなり良書であると思う。この本にはジョルダン標準形、行列の解析的取り扱い等が含まれていないので、別の本を参照すべきだろう。これと東大出版からの線型代数入門(齋藤正彦著)をあわせて勉強すれば、数学系の学科以外の人ならば十分であると思う。また、これらの本でわからないところは線形代数30講(朝倉書店)で補えばいいだろう。