しかしこの演奏のすごさは、ハイドンの一見何もやっていないが味のある演奏を、何も先入観なくそのまま完璧に表現している点にある。しかも自分の音楽の1つとして完全に一体化して演奏している。そういう演奏はありそうで、有名な演奏家ですら聴けなかった。聴けば聴くほど味わいのある演奏だと思う。
他のレビューで子供がコンサートなどで弾いたと記載されていた方がいらっしゃったと思いますが、確かにハイドンのピアノソナタはあまり高度な技術を要求しない。しかし子供では弾けないレベルがあることも事実である。例えば35番は今の自分達からすると単純な曲だが、この演奏には即興的でそのままハイドンがフッと出てくる感じがある。しかも全く古い感じはないのがいい。
ハイドンを知り尽くしそのまま生かしているこの演奏がいかにすごいか、このCDでも立証しているように思う。