正しい認識を得るにふさわしいテキスト
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過去において、日本社会が犯してきた、典型的な間違いの歴史のひとつに「ハンセン病問題」がある。
2001年(平成13年)ハンセン病国家賠償請求訴訟の「勝訴」…この二文字に関係者の方々はどれほど感慨深かったことであろう。
特効薬プロミンの登場によって、ハンセン病は治る病気になったにもかかわらず、強制隔離を法律の中心に据える考え方が継承されていたのである。「らい予防法」は199年(平成8年)ようやく廃止された。この時の国の謝罪にも多くの問題点があったことを本書は指摘している。
本書の副題が「きみたちに伝えたいこと」とあるように、「ハンセン病問題を学ぶ」中・高校生向けに分かり易く、問題提起をしている。「差別」とは何か、「排除」とはどんなものかを考え、学ぶのに適当な書物である。
著者自身がハンセン病療養所での治療を経て全快した、体験者であるだけに語る言葉に重みがある。沖縄屋我地島愛絡園からの「脱走が私の人生をひらいた」(第4章)「回復者として生きる」(第5章)人間に成長していく過程が述べられている。
「ハンセン病を理解するために」(第7章)誤解を解かなければならない。「遺伝病」ではない。「らい菌」による「感染症」であるが、その感染力は弱い、というはっきりした認識に立たなければならない。これまでの歴史で偏見に曝されてきたことも学ばなければならないだろう。
現在新規患者数はほとんどないと言ってもいい。この問題に対する誤解・偏見を解き、正しい認識にを得るための分かり易いテキストと言えよう。