純粋で、無邪気であるが故の、残酷な仕打ち。
彼の姿はどこか痛々しい。
それでも読むのを読めることなどできやしない。
だって、彼は自分を悲観していないのだから。
「ハッピーボーイ」なのだから。
残酷な世界に生きるが故、落としてしまった、
懐かしい「何か」を思い出すこと、必至です。
ジェリー・スピネッリさんの小説は、
「スターガール」しか読んだことがないのですが、
この二作品に共通することは、
やっぱり痛い。
それぞれの登場人物の姿に痛みを覚える。
でも彼らは読者に元気をくれる。
温かく、ほんのりと灯の燈った元気を。
だから、スピネッリさんの小説は、
多くの人に愛されるんだと思う。
なぜ、題名は「ハッピーボーイ」なのか。
純粋すぎる「ジンコフ」の姿に、
残酷な人々の目は牙を剥く。
しかし、彼らは、私たちは気付く。
「ジンコフ」ほど、ハッピーな少年はいないと。
「ジンコフ」ほど、愛すべき少年はいないと。
この物語に出会えて良かった、そう思うこと必至です。
痛々しい切ない話になりそうですが、作者の描き出すジンコフ少年はいつもキラキラ輝いていて、
その輝きは次第に周囲を巻き込んでいきます。また、理由はなんであっても楽しそうに
していれば、それを一緒に喜ぶ素敵な両親がいます。
人より優れていなければとか、やるからにはうまく出来なければならないという呪縛に
とらわれている人の目に彼はどう映るのでしょうか。
邦題はハッピー・ボーイです。
本人はそういうつもりで言っている訳ではないのかもしれないけれど、私にはちゃんと伝わってきました。
だから、最後のジンコフへの見方は、何でここまでこんなに心がキレイで、純粋なんだろうと感心させられました。
と同時に、心も温かくなり、元気をたくさんもらいました。