この本は、教員をめざす学生を主な対象としているようですが、
医療職についている私にとっても、興味深い内容でした。
道徳教育をこえて、現代社会の問題を論じた本、として、
一気に読んでしまいました。
戦争や少年犯罪、情報社会、あるいは医療技術や環境問題について、
もう一度考えなおすきっかけとなります。
身近な例や具体例が多く、読みやすかったです。

情報・生命・環境といった応用倫理だけでなく、
道徳と倫理、道徳教育の歴史といった、基礎的な部分も網羅されています。
そのうえで、実践編として授業や指導案の紹介・解説が続いており、
教育職の方には、かなり参考になるのではないでしょうか。

教育関係の方だけでなく、情報系・医療系・法律系に興味がある方が読んでも
おもしろい本だと思います。

多くの人は気付かないうちに道徳的な振る舞いを得てきただろう。
でも「ずばり道徳とは？」と尋ねられても答えられない。
道徳の正体がわからないから他人に教えることができなくなってしまう。
この本の読後、道徳に対するモヤモヤした気持ちを一掃できるかは一人一人の感性次第だろう。
しかしあらゆる側面から捉えられた道徳の各々の姿が道しるべとなって、
道徳を語れない我々に何らかのヒントを与えてくれるのは確実である。
社会生活で教えられたはずの「道徳とはこういうものです。」という例を思い出せないすべての人にお勧めする。