餅は餅屋
★★★☆☆
「競馬もスポーツである以上、基本ルールがある。しかし、競馬はサラブレッドという
動物を使った屋外スポーツであり、一国の全体を眺めれば、その競馬の有り様は国々の
気候風土によって異なっている。
この『ニッポン競馬のからくり』は平成21年1月まで、JRA競走部番組企画室長と
して軽種馬生産者向けに発行されている新聞『馬事通信』(道新スポーツ発行)に3年間
連載したものと、7年前、ロンドン駐在員事務所に勤務していた当時、雑誌『優駿』
(日本中央競馬会)に寄稿した記事から選んで加筆したものである」。
例えば日本競馬がパート1国に認定されるにあたっての経緯やその意義などというのは
当事者にしか語りえない話を含んでおり非常に興味深くもあるし、番組編成やシステムに
関する解説なども簡にして要を得ていて見事。
筆者自身はこのあたりの説明の後に「どうです、退屈だったでしょう? 興味深かった?
もし、そうなら、あなたはかなりの競馬マニアです」などと茶化してはいるが、本書が
価値を持ち得るとすれば、まさに氏の専門分野たるこのあたりの記述をおいて他にない。
逆に、例えば氏の競馬遍歴などはブログあたりでご自由にどうぞ、という程度の質しか
与えられていないし、義父である故・野平祐二氏についての記述も自身では「控え目に
書こうとした。が、時に感情が表れて……出過ぎたまねをしているかもしれない」と
語っておられるが、私にはむしろ淡白としか映らない。京都弁で会話するウオッカと
メイショウサムソンという妄想を他人に読ませるのもいかがなものか。
「南井克己」や「スピリットスワップス」などを筆頭に誤字脱字もやたらと目立ち、
書籍としてのクオリティに疑問が残る。
総じて頭のいい人であることは本書を読めば理解できるので、システムの説明等
氏のプロフェッショナルとしての職務に特化したテキストならば、さぞや興味深いものに
なっただろうに、とやや残念な次第。
競馬番組に興味のある方には一級資料
★★★☆☆
現役JRA職員の書いた読み物である。
タイトルがよろしくない。
素直に読めば「ニッポン競馬のかたち」とすべきところ。
冒頭
他の国でもやっている。盛り上がるから日本もそうすべきである、
という所説には大いに疑問である。
はしがき
この『ニッポン競馬のからくり』は、・・・選んで加筆したものである。
英国に住んでみて、競馬の姿かたちは国によってそれぞれに違うことをそれまで以上に実感した。
この本の半分にはその意識が流れている。
出典「馬事通信」と「優駿」
目次
4章 英国競馬スピリット
5章 ニッポン競馬のかたち
終章 岳父 野平祐二の思い出 ニッポン競馬のからくり
諸外国と日本の違いを再三取り上げており比較文化論は一目瞭然、
「この本の半分にはその意識が流れている。」
では残りの半分は何か?
ニッポン競馬のからくりは終章のラストに取ってつけたように出てくる。
いったい優れた競走馬が生まれる比率はどの程度なのだろうか。
「それは全体の2割である」
と、パレート氏は言うかもしれない。
我田引水ながら、JRA競馬番組は20%の優秀馬を最初に選定する適性な競走数を編成している、
といえないか。
本書の出典である馬事通信は軽種牡馬生産者向けの新聞である。
(JRAは)生産者の方を向いている、
『ニッポン競馬のからくり』と題した理由を見つけるとしたらこれ以外読みようがない。
■おすすめ
競馬番組に興味のある方、現役JRA職員の本は一級資料です
JRA
★★★☆☆
現役JRA職員が書かれた本です。
また著者は、故・野平祐二氏の義理の親子関係(娘婿)にあたるようです。
「競馬とはどんなもの?」という初心者が読むには多少難しい内容だとは思いますが、「競馬を知る」ことが出来ると思います。
「馬券以外の競馬も知っているよ!」という方には少々物足りないと感じました。
おおまかな内容としては、義父との思い出やイギリス滞在時の思い出、日本競馬と海外競馬との違い、中央競馬と地方競馬の違いなどについて書かれております。
特に番組編成やJRAの国際化について書かれている内容が興味深いです。
が、雑誌『月刊 優駿』などに掲載されていた時から2,3年経過してしまっているため、内容としては多少古くなってしまっています。
残念なのは、章立てのせいか時系列がバラバラになってしまっていて、内容としてはまとまりがないように感じてしまいました。