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千年前の人類を襲った大温暖化

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
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2度の気候変動が大混乱を巻き起こす ★★★★★
 古代文明と気候変動について長年研究してきた著者による最新作。今度はターゲットが比較的近い約1000年前である。
 西暦1000年頃のヨーロッパは過去数千年の平均から0.5〜2度ほど平均気温が高い温暖化の最中であった。温暖で湿潤な気候が何百年も続いたため、フランス・ドイツの北部でも農作物の収益が上がり人口爆発を生んだ。
 原因は太平洋上を揺れ動く気圧変動やエルニーニョ・ラニーニャ現象等らしい。
 ところが、同じ原因により同時期にアメリカ大陸は大干ばつ、インド西部は大洪水、支那大陸北部は洪水と干ばつの異常気象に見舞われ、数々の文明が滅んだ。
 その後の数百年は逆に寒冷化していたが、過去40年はここ数千年で最大の勢いで温暖化が進んでいる。原因が何であれ、世界中で水不足が起こることは間違いない。農産物の不作、不衛生が引き起こす疫病により、何億人の被害が出るか想像ができないと著者は警告する。
 
内容は面白いが、邦題がよくないのでは? ★★★★☆
中世温暖期(およそ800-1300年)にはヨーロッパは気候に恵まれていた。今も残るゴシックの大聖堂は当時の繁栄の証拠である。また、北の海も温暖化によって航海が容易となり、スカンジナビアの冒険者たちはグリーンランドの植民地を経営し、また北極圏の住人イヌイットと交渉をもった。さらにはアメリカ大陸に到達してその痕跡を残した。
フェイガンは、その時代の世界各地における実際の気候とその文明への影響の様相を想像力に富んだ詳細な記述で描写していく。舞台は中南米、アフリカ、アメリカの西部、中国、インドなどに及びこれらの地域ではヨーロッパとは裏腹に厳しい旱魃の時代であったことを明らかにする。

本書の魅力は気候と文明との関わりの記述である。中世温暖期は文明にとって恩恵となった一方、ある文明には致命的な崩壊をもたらした。そして気候が動因となって歴史が作られていく過程が語られるフェイガンならではの著書である。
しかし、本書の書名は現在騒がれている「地球温暖化」と絡んで少々大袈裟で、誤解を招くのではないか?
確かに「温暖化」の側面として旱魃の問題がある点について指摘した意味はあるが、原題は「THE GREAT WARMING Climate Change and The Rise and Fall of Civilizations」である。「大温暖化 気候変動と文明の興亡」とでもすべきであろう。内容的にもそうである。
煽りすぎの気はあるが、変動を抑えるより適応策を考えようという堅実な提案の良書 ★★★★☆
 おもしろい本。小氷河期が人類史上あまりよい時代ではなかったことは知られているけれど、一般によい時期だったと思われている中世温暖期も、実はあちこちで干ばつが起こっていて人類大変でした、というのが基本的な主張。ジンギスカンの活動も、マヤ文明やクメール文明も、温暖期のおかげで発展した一方で、それがもたらした干ばつで滅びました、というのはなかなか興味深いし、おもしろい読み物。
 ただし、数世紀にわたり全地球を探せば、そりゃどこかの文明は滅びているだろう。それを列挙して、だから温暖期は恐ろしい時代だったといえるの? マヤやクメールは、そもそも温暖期のおかげで栄えたわけだし。さらに、当時つらかったから今の温暖期も文明滅びそうといわんばかりのレトリックは不誠実。経済のほとんどが農業で世界貿易がまったくなかった時代は気候変動の影響は大きいだろうけれど、現在は条件のいいところで食料生産をしてそれを貿易で他に運べばそんなに被害は出ないし、文明が滅びるなんてことはたぶんない。
 でも本書は一見すると誤解されがちなんだけれど、こわいから排出削減をがんばろうというありがちな主張はしていない。人類は気候をコントロールなんかできないんだから(つまり排出削減なんか無意味!)、むしろ適応策をよく考えようというのが最終的な提言になっている。その中で干ばつの影響もよく考えてね、というわけ。これは前著などからちょっと立場を変えているので読み取りにくい書き方になっているけれどおまちがえなきよう。そしてそうした提言を離れても、数世紀の世界各地にまたがる話をうまくまとめた、楽しい読み物に仕上がっている。
1000年前の人々は、人間の最大の長所が、新しい環境に適応する限りない能力であることを思い出させてくれる。 ★★★★☆
 本書は、表題の通り、千年前にあった温暖化が、地球の各地に居住していた人類に及ぼした影響について、詳細な分析を行い、迫り来る大温暖化時代への強い警告の書となっている。

 本書に登場する地域は多様であり、かつ著者の分析は深い。温暖化によって恩恵を受けたヨーロッパ。ステップの乾燥化によるチンギス・ハーンの征服。西アフリカの乾燥化とともに消滅していったジェンネジェノの町。温暖な時期にあった、スカンジナビア人とイヌイット人の交易。千年前にあったアメリカ西部の大乾燥。大干ばつの時代に捨てられたプエブロ集落。干ばつと飢饉によって崩壊したマヤ文明。高度な灌漑技術を使って干ばつの時期を生き延びたアンデスのチムー族。温暖な時期に南太平洋の島々に進出したポリネシア人。モンスーンの気候によって栄えたアンコールワットのクメール人。干ばつにさらされた中国北部。などなど紹介するだけでも実に多様な1000年前の世界各地の様子を描き出している。

 恐ろしいことに、1000年前の乾燥した時代に比べて、我々の目前に迫っている大干ばつはさらに長く厳しいものになるだろうと著者は予測している。
 そのために著者が最後にこう述べている。「1000年前の人々は、人間の最大の長所が、新しい環境に適応する限りない能力であることを思い出させてくれる。」
これからの温暖化を危惧する第1級資料 ★★★★☆
 約1千年前にも地球上には温暖化の波が各地を襲い、世の中はパニックになったことが見て取れる。それから1千年たった今、人口は数十倍に膨れ上がり、化石燃料の消費も著しい現代。温暖化の津波は更に勢いを増すであろう。本書はそれを裏付ける第1級の資料である。