花鳥風月のタイトル通り、「虚空の鳥」「散らない花」「いずれ檸檬は月になり」「黒い風の虎落笛」と4つの物語が展開し、「私」の現実と物語が同時進行してゆく。現実と創作入り乱れる著者お得意の手法なので、ある程度この著者の本を読んだことがあると、ラストが読めてしまう…(岩井作品初読だったらばドカンときたろうな、ちょっと残念)。
しかし、月の物語「いずれ檸檬は月になり」に漂う妖気がすさまじい。月が二つある異国の××市、そこでは生と死のあわいで世にもおぞましいことが起こるのだ。現実の解決は、この小編に限ってはいらないくらいだ。不気味かつ奇想天外なイメージに酔える作品である。