キリスト教のアイコンを活用しよう
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キリスト教は単に宗教としてだけでなく、芸術・音楽・文学などの様々な文化、そして風俗に至るまで、ヨーロッパに対して影響を与えている。そしてキリスト教自身も、ヨーロッパの土着的な文化・伝承などの影響を受けて、現在に至っている。つまり、ヨーロッパの何事かを知る上でのキリスト教の影響を認識すること、そしてキリスト教を知る上でヨーロッパでの伝承の痕跡を知ることが、どちらも必要不可欠だということである。
本書はリヨン大学のミシェル・フイユ教授が著したもので、中世以前〜中世期のイタリア芸術の専門家である氏が、あるシンボリックな事物とキリスト教の教義・伝承とがどう関わっているかを、アルファベット順(訳書においては五十音順に並べかえてあるので御安心を)に参照できるように作られている。中世芸術における宗教的隠喩を理解するためだけに留まらず、ヨーロッパにおけるキリスト教伝承を確認しつつ宗教的事物を理解するためにも、大きさ、価格、内容からみて絶妙のガイドブックとなる一冊である。
西洋美術がもっと楽しくなる?
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パンやワイン、リンゴといった、キリスト教にまつわる象徴がコンパクトな新書に収められている。西洋絵画を「読む」のに役に立つ本。出典も細かく明記されている。
惜しいのは、索引(ラベル)が印刷されてないので引きにくいこと。それから、文字ばかりで図版がないこと。代表的なものだけでも図版があれば理解に助かると思った。絵画ファンや学問として学ぶ人におすすめ。
美術館めぐりにぴったり
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西洋絵画を鑑賞するのにはイコノロジーの知識が不可欠。特にキリスト教関係は専門の知識がないと正しく理解できない。事典形式の本で定評あるのは「西洋美術解読事典」(河出書房新社)らしいが、書店で見ると持ち歩きにはちっと大きすぎた。結局新書サイズのハンディなこの本にした。
説明も分かりやすく、該当するシンボルの聖書の関連箇所も分かるようになっている。500以上の項目が新書版の200ページ足らずの中に整理されている。事典ではあるが順番に読んでいっても楽しい。
この本を手に、手元にある画集のシンボルについて考えてみると実に面白く感じる。「名画を読み解くアトリビュート」(木村三郎著)の次に買った。ポケットにこの新書を入れて、美術館を巡るのが楽しそうな気がしてきた。次の休日が待ち遠しい。