フランス人スペイン史研究家ピエール・ヴィラールによるスペイン内戦史。通史でもなく、ある一つのテーマに固定したものでもなく、内戦の状況と構造の分析を軸に、政治・経済・軍事・社会・心性など様々な視点からスペイン内戦の全体史を描こうとする。日本語のスペイン内戦史文献は単調な通史がほとんどであるが、このヴィラールの著作からはオリジナルのダイナミズムが感じられる。
最近の欧米の内戦史研究では、ある地域に注目した研究が蓄積されてきているようだが、このように全体像を捉えなおす、整理してみる必要も
あるだろう。特に、近年停滞している日本におけるスペイン内戦史研究においても、ここ10数年の研究成果を踏まえた新たな内戦史を描いていく必要があるのではないか。
それから、多少内戦に関する基礎知識がないと読みづらいと思う。