介護保険の抵抗勢力、推進勢力
★★★★★
待望の下巻がようやく刊行されました。
10年前の介護保険実施までの経過が、霞ヶ関の官僚たちから、地域の介護現場で働く人々まで、よく目配りの届いた生き生きとした語り口で
介護保険誕生の物語がつづられます。一話完結の物語形式でとても読みやすくなっています。
日本の官僚も捨てたものでないなというのが率直な感想、志をもった行政官たちの情熱と時代のいきおい(自社さ政権)がマッチして、
国際的にも評価される制度が、まさに奇跡的に成立したのだと、本を読み終わってため息をつきました。
介護保険のような大きな制度創出にあたっては、当然、抵抗する人たちと賛成する人たちが入り乱れますが、最初のころは自治体側に大きな抵抗感があったというのは驚きでした。最後に成立するときには推進勢力になっていましたが。
介護分野にかかわらず、日本の社会がその大本でどのように動くのかをまざまざと示してくれます。
それにしても、読後感がさわやかなのは、楽天的で、いさぎのよい、また控えめでもある著者の人柄によるものだと実感。