シカゴとイリノイを知ることで、アメリカの歴史と文化が見えてくることがわかる
★★★★☆
著者は1986年に渡米して(本書出版時に)在米22年になる人物。1999年に移り住んだイリノイ州についてその歴史と文化をみつめた書です。
在米経験が長いにもかかわらず著者の日本語は練達で、本書はシカゴ市とイリノイ州の(観光コースでない)案内書というよりは、なかなか読ませる随筆的な読み物に仕上がっています。
シカゴ市の今日の発展の礎となったのは、南北戦争後のホームステッド法と鉄道の発達。以降、大量の人と物資がミシシッピ河を越えた西方に運ばれるようになり、それ以前は未知だった大地域がシカゴの巨大市場になったから。シカゴのこの可能性に魅せられた東部のアメリカ人たちが次々とシカゴを目指し、創意工夫の才を発揮して巨万の富を築いていったのです。
本書はそうした先達たちとして、寝台車を作った鉄道王ジョージ・プルマン、世界初の通販を考案したモンゴメリー・ワード、一大スポーツメーカーを成したアルバート・スポールディング、マクドナルドをフランチャイズ化したレイモンド・クロック、建築家フランク・ロイド・ライト、作家アーネスト・ヘミングウェイらを紹介しています。
さらに著者はシカゴ以外のイリノイ州の小さな町々を訪ね、ポパイの作者エルジー・セガー、北軍の英雄グラント将軍、モルモン教の創始者スミス兄弟、元大統領ロナルド・レーガンなどについても筆を進めます。
ニューヨークやロサンゼルスに比べれば日本人にはなじみ薄いシカゴとイリノイを知ることが、アメリカの歴史と文化を知る上でなかなか重要であることを教えてくれる好著です。
*61頁のWorriersはWarriorsの、183頁のSARTはSTARTの誤り。
*221頁のドイツ語表記は複数形の定冠詞dieを人称代名詞のsieとしたり、ドイツ語では大文字にしなければならない名詞の語頭を小文字表記したりするなど誤りあり。