ネオ・クラシカルHR:ロイヤル・ハントのデビュー作。
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ネオ・クラシカルと言うと、イングヴェイのような、速弾きギターヒーローが率いるケースが多いが、このバンドはHM/HRには珍しい、キーボードがリーダーのバンドである。その名もアンドレ・アンダーセン。身長197cmの大男にして、眉毛が繋がっており、毛深く、大酒飲みで、押しが強い。とても繊細なクラシックなどやりそうにないのだが、ロシアで正式な音楽教育を受けており、キーボードを弾かせたらそれは素晴らしい音を奏でるのである。
現在は、名のある高音シンガーを起用するのが通例になっているが、デビュー当初の彼らは、決してそうではなかった。初代ヴォーカル:ヘンリック・ブロックマンは、潰れた声のブギー調シンガー。レンジが狭く、高音は殆ど出ない人物だった。
デビュー作「LAND OF BROKEN HEARTS」は、それを補うように、覚えやすいキャッチーな主旋律が随所に配置され、殆どの曲が3〜4分のコンパクトな作りをしていた。若干、反戦のメッセージを織り込んだ全13曲の中で [3] Flight、[7] Heart of the City、[12] Stranded の3曲が特に優れていた。しかも、その他の曲も皆佳曲揃いであったため、デンマークの新星は一気に人気が沸騰。「またしても日本のメタル・ファンが優れた新人を発掘した」と当時話題になったものだ。表紙に道化師をあしらった次作「CROWN IN THE MIRROR」でも優れた作曲力を見せつけ、3rd.で遂にワールドワイド契約を勝ち取ったのは周知の通り。
現在は少々マンネリ化が進み、大仰なだけのワンパターンに嵌ってしまっているが、彼らの本質は、キャッチーでコンパクトなこのデビュー作にこそ、あったのではないか? と自分は思うのだ。