意外に深い
★★★★★
藤森先生が書かれた中で一番好きで、何度も読んだ作品です。
恋多き女性だった母親が亡くなり、悼む気持ちとともに
かすかな安堵を感じる一人息子の愁一。
美しくわがままで気まぐれだった母親には色恋がらみの問題が多く、
幼い愁一が巻き込まれることも度々。
それは母親を溺愛していた祖父ですら孫の愁一に向って
『母のようになってはいけないよ』と言い聞かせて育てたほどでした。
成長し、外見が奔放な母の生き写しのように美しく育った愁一は、
母の淫蕩な血までも引いているのではと恐れ、恋愛はおろか
人と触れ合うことすら避けて生きています。
そんな母の葬儀で愁一(受け)は遠山(攻め)と出会います。
企みを持ち、愁一に近づく遠山と警戒しながら少しづつ
遠山を受け入れてしまう愁一。
愁一が任されているアンティークジュエリーのショップで起きた事件が
きっかけで、愁一は遠山に体を奪われますが、(厳密に言うと奪われて
ないのかも)恋人でもない遠山に翻弄されて乱れてしまい、自分は母より
淫乱なのでは…と愁一は悩んでしまいます。
そんな修一が自分から遠山を求めて一線を越えた直後、遠山の企みが
明るみになり、その辺りから愁一の母親の印象が微妙に変わり始めます。
(「淫乱な悪女」→「淋しい女」くらいですが)
遠山に事実を確め別れた後、遠山を忘れたくて愁一が取ってしまう行動が
軽蔑していた母親とそっくりで、母親も今の自分と同じような気持だった
のかも…と愁一が初めて母親に対して歩み寄ります。
このあたりって比較的緊迫してるんですが、母親に恐怖を擁いていた愁一に
とっては救いのある場面かもしれません。
そして愁一が知らない奴に口説かれて連れて行かれそうだよ、と知らせを
受けた遠山が愁一を奪い返しに人ごみを掻き分け進む場面は、
形振りかまわず猛然と進む戦車みたいでそんなに愁一が好きなんだー、と
ほっとしちゃいます。
読後に幸せな気持ちになれるお話です。
美人受けって土壇場で攻めに余裕がなくなったりするので、攻めが
必死になるより受けが必死になるほうが好きという方にはお勧めしません。
母が残したものは、
★★★☆☆
親同士の因縁と高価な指輪が、遠山と愁一を引き合わせる。
だが、近付いて来た遠山は、愁一を欺き陥れるという目的を持っていた。
そうとは知らない愁一は、遠山のあらゆる言動にも自らを抑え我慢を重ねる。
敵視して侮蔑の目を向けていた愁一に 逢うたび徐々に惹かれてしまう遠山と、
とっくに好きだったのに、騙されていたと知り苦悩する愁一。
出だしの葬儀の辺りは興味深く読めたものの、
ページを捲るにつれ、徐々に息切れ?
有りがちな展開に期待が萎んでいってしまった。
野性的な魅力に魅せられて・・・・
★★★★★
母親の葬儀に現れた、謎の男遠山、かつての自分の父親を聾楽した、
相手の葬儀を見届けに行ったところで、忘れ形見の
水本愁一に出会い宣戦布告する遠山だが・・・・・
うわべは、何の変哲もない平凡そうに見せて、愁一の母親が淫蕩に描かれて
いたり、遠山と愁一の一触即発なところありと、波乱含み展開を呈して
でも、終焉には、ちゃんとお約束のハッピ−エンド
で母の形見の指輪まで、送られて、決めゼリフも憎い・・・・・
そして、いつもながら、蓮川先生の優美なイラストも必見
です。。。。