「歴史とは、それが書かれた時代の産物である」
★★★★★
史書を読む際に度々悩まされるのは以下の点である。
1) 史実列記のみでが背景描写が貧弱、あるいは欠落している
2) 作者が暗黙の前提を置くことで読者への説明が省略されている
3) 作者の主観が入り込んで史実に色がついている
4) 広範な年代を扱うがために各時代の特色がうまく打ち出されない
中世から現代までという気の遠くなるようなタイムスパンを記述する本書だが、
上記懸念をすべてクリアしており、ドイツに興味がある方にはぜひともお勧めしたい作品である。
「現代の視点から過去の史実を批評することの愚かさ」を作者は強調するが、
あくまで中立点に徹しての流れるような筆致で読者をうまく歴史へと引き込んでくれる。
最後にこの作品は翻訳作品であるが、
それをまったく感じさせない訳者の仕事に敬意を表したい。