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かなしみの場所

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 角川書店
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自分がしっくり出来る場所を探したくなる ★★★★★
タイトルの『かなしみの場所』は、読み進めていくと違和感を感じる
この本に出てくる人達が優しく、人情味が染み入る内容だから・・・
でもページをめくる毎に少しずつ見えてくる登場人物達の抱えている過去に
耳を澄まし、読後悲しみが優しさと合い交わってしまった。
普段口にはしないけど、溜飲する過去が甦り手が止まる・・・
この本に出てくる人達が抱えている過去
日常生活を送りながら、心の奥に潜むかなしみの場所
人が人と関わること、当事者だけでなく第三者も加わることで
長年したためてきた悲しみが薄れてゆく糸口になったりする
悲しみの場所を抱いているからこそ、自分がしっくりする場所を探し続ける
この本に出てくる人達のように、自分がしっくり出来る場所って
何よりも見てる人も聞く人も幸せな気持ちにさせる
この本はそんな本に感じた
かなしみの場所 ★★★☆☆
離婚して、アクセサリーや雑貨を作りながら淡々と日々をおくる果那と、彼女をとりまく人々の物語です。

特にドラマチックな出来事が起こるわけでもなく、本当に静かな物語でした。強いて言えば「子供のころ誘拐された」お話がドラマチックなのかもしれませんが、真相はともあれ、それもなんだか心温まるエピソードといえないこともなく…。

主人公の果那が、ちょっと甘えすぎなんじゃないの?!と思う感もなきにしもあらずでしたが、それもまたよしということで。(だって大騒ぎして結婚したわりに結局すぐ離婚して、でもそこで修羅場もなく、どろどろすることもなく、実家に戻って、好きなことやって暮らして、それがうまいこと仕事にもなって、周りの人間にもめぐまれてて…。うらやましいくらいのものではないですか!)そんなわけで、帯にあったように「生きていくことのいとおしさが胸にこみあげる」ほどのことはなかった私ですが、でもこの透明な感じ、きらいじゃないです。

タイトルは「かなしみの場所」ですが、悲しくはないです。この「かなしみ」が確かにひらがなの「かなしみ」の感じだなぁと、そう思いました。

「三日月の舟」に乗って。 ★★★★★
 大島真寿美さんの、静かにたゆたうような感受性に惹かれています。『かなしみの場所』は、大島さんがこれまで書いてきた世界のひとつの到達点のように思えます。言葉に例えにくい“気配”あるいは“心地”とでもいうものが、実に丁寧に描きこまれていて、こちらの心に響くのでした。
 物語は終始静かで、主人公の果那の生活を写し取りながらも、果那の記憶の隅に置かれたまま、ほんのりと色を差したようなある出来事を浮かび上がらせていくのです。
 静かな物語ですが、果那には、離婚やよく眠れないという現実があり、ちくっと私を覚醒させます。果那は今、実家に戻り、雑貨を作りながら淡々と日を送るというような塩梅です。果那が作る雑貨の卸し先、「梅屋」を取り仕切っているのが、果那と年もほとんど違わない、みなみ。物をはっきり言う人で、果那とのやりとりが作品のおもしろいアクセントになっています。ちぐはぐなコンビながら、信頼しあう二人の気持ちが快く感じられました。
 果那とみなみが、お互いの輪郭のぼやけたような記憶について語り合う場面は、気持ちにしいんと染みる味わいがありました。
 多分、どんな人の心にも、簡単には言葉に表せないような想いや忘れられない出来事があって、それは、新しい日々がどれほど重ねられようと、変わりなくそこに在り続けるもの。その“気配”“心地”だけが、いつまでもひたひたと心の淵で揺らいでいるような……。なんだか、生きていくことも満更じゃないなと、優しい気持ちになります。
 果那が周りの人の、いろいろな想いを受け取り、人生の苦みを知って、なお、日々をゆうらりと漕いでいくようになるまでの軌跡が愛おしく感じられました。
 「三日月の舟」と題された章が、最初と最後にあります。舟を漕ぎ、広がる波紋。淡い水の影のような、人生のひとこま。でも、かけがえのない想いの交錯がきらりと光って、見飽きない風景のような物語でした。
なつかしくて優しい調べが、胸に満ちてくるような小説 ★★★★★
 “生きていくことのいとおしさ”が、じんわりと心にしみ込んでくるような味わいがありました。主人公の果那さんと、彼女をめぐる人たちの心の触れ合いが、静けさを湛えた文章からやわらかく浮かび上がってくるような話の風情。頁をめくっていくうちに、気持ちがすうっと落ち着いてくるみたいな、そんな居心地のよい雰囲気に浸ることができました。

 果那さんの眠りというのが、この作品の重要なモチーフになっていたように思います。「梅屋」では引き込まれるように眠りに落ちてしまう果那さん、自分では気づかないのだけれど、眠りながら寝言を言うのです。それがどうやら、過去に起きた出来事と関わりがあるということが分かってきます。果那さんが夢の中で見る景色は一体どんなものだったのか、そしてそれはどんな色に染められていたのか。
 果那さんが夢の中で見た景色と、その色合いの優しさ。読み終えて、それがゆっくりと私の胸の中に広がっていく感触。なつかしくて優しいもので満たされていくような味わい。“生きていくことのいとおしさが胸にこみあげてくる”ようなあたたかさと、しみじみとした静けさ。それがとても素敵でした。

 水上多摩江さんの装画と、松岡史恵さんの装丁もいいですね。心にそっと静けさを運んできてくれる、そんな優しい色合いが、作品のたたずまいにとてもしっくり重なるみたいです。
 まん中に描かれた“三日月の舟”が、またいいんだな。本書の最後の一頁を閉じた後に、この“三日月の舟”を、そっと心に浮かべてみたくなりました。

かなしみの場所 ★★★★★
本を読み終わる間、最初から最後まで、静かな時間が過ぎていった。

本のタイトルは「かなしみの場所」となっているが、私には梅屋は居心地の場所に思えた。慌ただしい日々の中で、そこだけが空気が違うような気がした。そんな梅屋を中心に、様々な人々の、それぞれの人生が綴られていく。こんなにも言葉を心から抱きしめたいと思ったのは久しぶりだ。

読んだ後、切ないような、やっぱり静かな時間に包まれた。