未来へと連なる科学の哲学と歴史
★★★★★
世界に働きかける実用的な手段であり、世界を観る枠組みでもある科学と技術が、人類の営みの中でどのように産まれ、どのように社会と関わってきたのか。こういう統一的な図式を、古代から現代に至るまでの歴史的な視点から示してくれる本を随分探していたが、ようやく求めるものに出会えた気がする。内容は広くて浅いが、その広さは孔子からサイバネティクスに至るまでと半端無く、浅いと言っても本質の含有度は極めて高い。大学に入ったばかりの頃に読みたかったとも思うが、断片的な知識と問題意識を未消化のまま抱えていた今だからこそ、価値が分かるのかもしれない。
道具がつくられ、農耕がはじまり、都市が興って哲学が花開く、というところまでは、世界各地でほぼ同時に起こってきたが、なぜ科学だけが西洋文化に特異的なものとして産み落とされたのか。中国やインドやアラビアとの関係性も考慮しながら、西洋特有の思想と宗教の伝統の内に、その原因を探り当てている。その後、産業革命や社会主義の勃興、進化論や相対性理論の発展を経て、一旦は哲学と分離した科学が再び哲学と融合すると同時に、社会情勢や国家体制との結びつきがどんどん強固になってきた。そうした事実を踏まえた上で著者たちが現代(といっても70年代)に突きつける、社会と思想と科学自体の行き詰まりに関する問いは古くて新しい。
「科学を理解しない者は“無知”であり、科学を妄信する者は“無粋”であり、安易にポストモダンに走る者は“無智”である」という思いを新たにする。専門分野が何であれ、科学に対してどのような態度をとるのであれ、いやしくも科学や技術について何かを語るには、この本が示す程度の経緯と事情は踏まえておきたい。
読みごたえはあるが、気合が必要。
★★★★☆
科学の歴史において重要な人物、理論をほぼ網羅的に
取り上げ、余分な話をいっさい省き、内容を凝縮させた感じの本。
中身の濃さは、申し分ないが、ちょっと「遊び」がない気がする。
理系的センスのある人は、普通に読んでも楽しめると思うが、
そうでない人は、教科書だと思って気合を入れて読むか、
あるいは、索引も充実しているので、辞書的に使うのも
よいのかもしれない。
プロローグ、エピローグの鼎談は面白い!
科学はどこへ向かうのか?
★★★★★
もとはNHKの大学講座のテキストだそうだ。別の出版社からの初版が1975年というから,今から30年も前ということになるが,今後の科学を考える著者らの視点は今でも十分に通用する。
自然科学の発達の歴史が,その時代の社会や思想を踏まえて解説されている。まさしく「思想史の中の科学」という内容。思想という背景から説明されると,ニュートンやコペルニクスなどに持つ印象が変わるかも知れない。
3人の著者の対談も含まれているが,その中で(あまり一般的でない)横文字が頻繁に出てくるのが,対談そのものに難解な印象を与えてしまっているのではないか。しかし,この対談も思想から見た科学史の概略が理解できて役に立つ。