そうやって飛び出していったいくつもの現場の中で、
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彼女の心の琴線に触れつつも、(恐らくは)報道としてあまり表にでることのなかった、現場現場の様々なディティール。
この本で語られるそんなディティール達からは、現場を歩いたものにしか得られない(テレビや新聞の活字からはなかなか伝わりずらい)「リアリティー」が、じわりじわりと伝わってくる。
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語るにチョイスされた事件も、たまたま記憶に新しかったり、最近のニュースとリンクする事件が多かったのでとても興味深く引き込まれるように読んでしまった。
この本に一番好感を持ったところは、彼女の取材に対する姿勢や情熱もさることながら、
とりあげた事件そのものについて彼女が批評的コメントをしていないところだ。
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ニュースを咀嚼・消化して結論づけるのは、あくまで自分自身でなくちゃいけない、といまさらながら再認識。
安藤さんが現場だからこそ感じえたリアリティ。
それは、私の中で既にジャッジ・整頓したいくつかの事件に対する評価を、再考させる力がありました。~
「報道の自由」や「知る権利」、「言論の自由」を声高に振りかざすあの手のジャーナリストが書いた本ではない。また、マスメディアで働く者が描く内幕や暴露話ではない。サラリーマン・ジャーナリストへの苦言や、複雑すぎる事実の背景すべてを単純化して発信するマスメディアの特性に抗い、削ぎ落とされた事実を少しでも視聴者に伝えようとする著者の意気込みがありながらも、肩肘を張らずに読みやすいのは文体で書かれているおかげで、スイスイと読める。
テレビでいつも観る彼女は隙のないキャリアウーマンのように感じるが、実はそうではないようだ。
彼女はプロパーのアナウンサーだと思っていたが、思い違いだった。彼女は他社のマスコミ側から疎ましく思われていると書いているが、そういう非主流派がいないと世の中おかしくなるのだから、頑張って欲しい。せっかくだから、櫻井よしこのように、(あとがきを読む限り、彼女はジャーナリストだと自分で思っているようなので)独自の考えで取材を続けられるように精進してほしい。
現場をおもんぱかる安藤さんの書いたこの本を読み進めるにつれ、
自分の正義の情報が崩されていく。
やはり、現場のリアリティに勝る情報はない。
そのリアリティが安藤さんという個人を通して伝わってき、
安藤さんが非常に身近な存在となった。
ニュースを見る目が変わりそうです。