発達からみた精神病理
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スターンは、乳児を「被観察乳児」と「臨床乳児」に分けました。被観察乳児は直接観察の中から乳児の発達や行動を理解していく際の対象です。臨床乳児は成人患者の回想から導き出される体験としての乳児です。スターンはそれら二つの乳児を両方ともつかい、統合していく作業を進めました。
そして、スターンはそれらのデータから発達論を形成していきましたが、その中心は自己感においています。自己感は自分自身を全体として機能させていくオーガナイザーとして表現されています。その自己感がどのような働きをし、どのように発達していくのかが着目点です。
その自己感は、新生自己感→中核自己感→主観自己感→言語自己感と段階をおいます。そして、スターンの発達論の今までとは違うところは、これまでの発達論では、発達の段階が上がると、前の段階の発達は捨て去られるものとなっていました。しかし、スターンは、前の段階は捨て去られるものではなく、一度獲得したら半永久的に機能し続けるものだとしました。また、これまでの発達論では乳児は環境に対して受身的で、無力である、とされてきました。しかし、スターンが考えた乳児はそうではなく、かなり積極的で、環境に対して能動的で、進んで様々な情報を摂取し、思った以上に色々なことを理解しているようです。
精神分析における発達論は、発達がどのように進むのかだけで話は終わりません。各発達段階での失敗や固着などが現在の病理とどのように関連しているのかを考えます。スターンの4つの自己感の発達も同じように、各段階の自己感の病理がどのように現在の病理に関連してくるのかがとても重要です。